保険 アリコ Moon of Samurai 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第45話 「これが最後なら」 

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「鉄華団が走りつづけた道のはてが、あがりが見えてんだ。アリアンロッドのラスタル・エリオンって野郎をやれば、俺たちの未来はかわる!」
「わかってるよ!」
「切った張ったの世界はこれで最後だ。そっからさきは、女だろうがカネだろうが、思うがままだ!」
「いねえしいらねえ!」


 昭弘のセリフに同情の念を禁じえません。
 そしてオルガのハッパのかけかたには一抹の悲哀を感じます。火星の王とかあがりとか、鉄華団をひっぱってゆくための目標をかかげながらも、その実体を説明するだけのことばをオルガはもちあわせていないし、そもそも具体的な理解もできていません。だから女だのカネだのとオルガにふさわしからぬ卑近なシロモノを持ちだしてくるしかなかったのです。

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 ラスタルにバルバトスをとめるよう直々にたのまれたジュリエッタは格上の三日月を相手に善戦します。マクギリス陣営は鉄華団がいちばんマシな戦力で革命軍は練度がひくく、おまけにほかの部隊はあてになりません。対するラスタルはただでさえ圧倒的に優位であるのにダメ押しの策をもちいてきました。

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 革命軍にスパイをまぎれこませてわざと自軍に禁止兵器のダインスレイヴをうちこませ、それを口実にあらかじめ用意しておいたダインスレイヴの大量投入によって戦局をさらに優位にもってゆきました。なおスパイは口封じのために自決させるという手のこみようです。目的は手段を正当化するというマキャベリズムのお手本みたいなやりかたで、ここまで堂々と卑劣かつ効果的なことをやられては腹が立つよりも感心するほかありません。

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 ダインスレイヴの一斉射撃で革命軍は全戦力の半数が壊滅し、鉄華団もシノが被弾してホタルビは火器管制が機能不全におちいりました。
 しかし誘導ミサイルでもないのに、このバカみたいに広いうえに三次元の宇宙空間で、艦船はおろかモビルスーツにまであててしまえるダインスレイヴの射撃精度の高さといったらありません。10式戦車の射撃統制装置が百均の電卓に見えるくらいに超高性能のコンピュータをつんでいるのでしょう。ダインスレイヴのおそろしさは破壊力もさることながら、それ以上に命中率の高さにあります。
 それはさておき、この圧倒的不利な状況下、マクギリスのうった逆転の一手とは!?

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「革命は終っていない!
 諸君らの気高い理想は、決して絶やしてはならない!
 アグニカ・カイエルの意志は、つねに我々とともにある!
 ギャラルホルンの真理はここだ。みな、バエルのもとへつどえ!」


 具体的な根拠ゼロの、ものすごくフワフワした内容の演説でした。今回のマクギリスは革命軍の練度がひくいと知りながらアリアンロッドの集中攻撃にろくな対策をたてていなかったり、ギャラルホルンの自作自演体質を知りながらダインスレイヴみたいに巨大で目だつ武器をかかえたモビルスーツが革命軍に近づくのに予想も気づきもしなかったりと、アホなところがめだちます。前回バエルを手にすればギャラルホルンは意のままに動かせると思いこんで足もとをすくわれたのは、そのあまりにも悲惨な過去ゆえに生来の聡明さがくもったのであろうと好意的に解釈したけれど、こういう実務的なところで無能をさらけ出されては擁護する気がおきません。
 てーかこのアニメ、登場時や安全圏内だとさも有能で狡猾で一筋縄ではゆかないような雰囲気をかもしだしておきながら、いったん不利になったらとたんに化けの皮がはがれる連中が多すぎます。蒔苗のじいさまやマクマードの親父さんはいまのところ大物風をふかせているけれど、たぶん追いつめられたらこれまでの無能どもとにたようなリアクションをとるにちがいありません。ラスタルがそんなことにならないことを今からねがっておきます。
 で、そのマクギリスのところへ因縁のガエリオがむかってきたものの、石動がわってはいったのでマクギリスは残存勢力をまとめるためにその場を去りました。のこされたガエリオと石動はガンダム名物パイロット同士の会話をはじめます。

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「なぜマクギリスにつきしたがう。あの男は、君を友とも仲間とも思っていない」
「わたしはそんな感傷的な関係を、准将に求めてはいない!」
「愛をささげた女すら道具にした男だ!」
「わたしの願いはただひとつ、准将がつくりだす未来を見ることだ!
 その礎になれるというのなら、それは本望というもの!」

「人がここまで愚かになれるとは!」


 ガエリオと石動の言いあいについては前者に共感します。石動は一見したところマクギリスの理想のためなら自分の命をなげうつ覚悟の持主で、この要素だけなら好みのキャラクターなのだけれど、これまで石動がどういう人物なのかがろく描写されなかったためにマクギリスの腰巾着でものすごく薄っぺらな男に見えるのにくわえて、マクギリスのつくりだす未来とやらがぜんぜん具体的な姿をもって説明されていないため、そんなシロモノに命をささげてしまうような男はただのアホと見えるばかりです。マクギリスの吹きならすハーメルンの笛におどらされる革命軍の有象無象とたいしたちがいがありません。
 しかしだからといってガエリオに心から感情移入できるかと問われれば首を横にふるしかないのが悲しいところです。石動とのやりとりとか、このあと舞いもどったマクギリスに対してのガエリオは、言うなれば自分をフッた男に内心では未練タラタラで、口では反発しつつも実際はヨリをもどしたくてしかたがないのに、そこへ元彼の今カノがあらわれたものだからダダをこねている、とそんな感じがプンプンしてまことに女々しい。前々回のカッコよさがウソのようなみっともなさです。ホントこのアニメは話がすすむとキャラの格がさがってばかり。鉄血スタッフは『キン肉マン』の今のシリーズを正座して百ぺん読みかえすべし。
 さて鉄華団です。こちらはマクギリスにくらべりゃナンボか実効性のある手をうちました。シノがヤマギとホモくささ全開でイチャついたあと機能不全のホタルビの頭に四代目流星号をのっけてダインスレイヴでラスタルをねらいうちすべく敵艦隊のド真ん中へつっこんでゆくというものです。こんなんでもマクギリスにくらべりゃナンボかマシなのだからマクギリスの無能さがきわだちます。
 で、特攻。

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 ミス! ダメージをあたえられない!

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「シノちゃんここで外すー?」

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「シノちゃんと呼ぶなあ!」

 シノの名誉のためにことわっておくとホントなら命中できていたはずだけれど射撃の瞬間にジュリエッタの機体の蛇腹剣で照準を狂わされたために長蛇を逸したのです。マトのほうから当りにきての撃破数一の桃ちゃんとはちがうのだよ、桃ちゃんとは!
 ところでネットの感想を見るとシノが無駄死にだとか脚本家にアホな殺されかたをしたとかいう意見が多い。俺はそうは思いません。敵のアリアンロッドは戦力も上、狡猾さも上で、鉄華団は絶体絶命の窮地に立たされてからの一発逆転に賭けたわけで、そんなバクチがそうそううまくゆくわけねーだろという気分なのです。シノが戦果ゼロで死んだのは残酷ながらも妥当な結末でした。視聴者にとってシノは第一期からのつきあいのふかいキャラではあるものの、巨視的に見れば反乱軍に助勢した地方の傭兵部隊の一パイロットにすぎず、それが現状世界最強の正規武装組織の事実上のドンとさしちがえたのでは、ギャラルホルンからすればやってられません。シノの特攻はあのばあいあれしか道がなかった。それはそのとおりです。しかしそれがうまくゆくかどうかはまた別問題なのです。
 つまり俺が何をいいたいのかというと。

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 「こわくない、こわくない!」と自分に言いきかせるアトラがガオガイガーの華ちゃんみたいでかわいかったということです(ぉ



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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第44話 「魂を手にした男」 

【悲報】バエル、錦の御旗にならなかった

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 前回のレビューで「三百年も封印されていたような機体をまえぶれもなしにもちだしたところで心からマクギリスにしたがおうと考える者はすくないのではないでしょうか」ということを書いたところズバリ的中しました。ラスタルは一顧だにせず、デブやジジイのセブンスターズは中立を主張します。きわめて妥当な展開ではあるものの、おかげでマクギリスがずいぶんなアホになってしまいました。
 とはいえアホといいきるのはさすがに酷だと思いなおしました。かつてこの世の闇のいちばん深いところではいずりまわっていたころ、アグニカ・カイエルの物語を知り、神聖不可侵の光が頭上にかがやく思いがしたのでしょう。これさえ手にいれられれば自分でも幸せになれる、という思いこみがマクギリスの目をくもらせたのです。マクギリスはいわば不幸せなロマンチストです。
 いっぽうラスタルは自分の生れにもまわりの環境にもぜんぜん疑問をもたないタイプです。ギャラルホルンの善悪などそっちのけでひたすらに自分の力を扶植し、目のまえの敵をたたきつぶす、そういう現実的な行動にのみ価値を見いだす男であってアグニカ・カイエルみたいなおとぎ話は一顧だにしません。こちらは幸福なリアリストといえましょう。
 不幸せなロマンチストと幸福なリアリスト。こう書くとマクギリスは分が悪いなあ。そしてそれはそんな男に自分と仲間の命をぜんぶ賭けるはめになったオルガもまた同様です。

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 くやしい……! でも……愛しちゃう!(ビクンビクン)
 というわけで兄を殺そうとし自分をいままでずっとだましてきた男のことをどうしても憎みきれないアルミリアでした。個人的にはマクギリスもガエリオもラスタルもみんな大の男なのだから地獄の底で憎みあい殺しあうような目にあっても一向にかまわないのだけれどアルミリアみたいな小さな女の子が悩み苦しむ姿を見るのはつらい。

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 ライバルや妹におくれをとるまいというつもりなのかどうかは知らんがガエリオはガエリオでジュリエッタとよろしくやっていました。でもさあ、変態マスクだったころからシコシコ好感度をあげていった女の子と仲よくするなとはいわないけどさ、もう正体をバラしてしまったんだからすこしは実の父親や妹のことを心配してくれよガエリオ。つーかまっさきに考えるべきはパパンとアルミリアの救出と保護じゃないのかねえ。ふたりとも事実上マクギリスの人質なのだから。

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「ラスタル・エリオンと、彼のひきいるアリアンロッド艦隊は、ギャラルホルンでも独自の地位を築いている。だが、各当主の戦力をまとめれば、かなわぬ敵ではないと考えていた。なにより、われわれには君たちがいる。多少の被害があぶべら!」

 さすがオルガ! おれたちにできない事を平然とやってのけるッそこにシビれる! あこがれるゥ!
 さてマクギリスは錦の御旗のもとに手にいれられるとふんでいたセブンスターズの戦力がのきなみ中立宣言したので自分と鉄華団だけでアリアンロッド艦隊と戦うことになりました。しかしアリアンロッドのラスタル陣営はかれのみならずセブンスターズの三家を擁する一大戦力です。『ワールドトリガー』でたとえるならA級一位の太刀川隊みたいなものです。ラスタルのエリオン家が太刀川さんでガエリオのボードウィン家が出水先輩、そしてイオクのクジャン家はもちろん唯我!
 ……なんだかマクギリス陣営に強烈な勝ちフラグが立った気がするぞう。


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「あと一回だ」

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「あと一回。これが最後だって」

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「あと一回やりゃあ上がりなんだ!」

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「先っちょだけ! 先っちょだけだから!」

 あと一回あと一回とぜんぜん信用ならないことを連呼するものだから同じく信用ならないセリフをつい捏造してしまいました。まあアトラのことだからもし三日月にうえのようなことをいわれたら先っちょのみならず根もとまでカムインカムイン最後までオールオッケーバッチコイなのは確実なのですがね!
 次回のアバンが三日月とアトラのすっぽんぽんの事後シーンからはじまったとしてもわたしは一向にかまわんッッというかのぞむところだ!

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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第43話 「たどりついた真意」 

 マクギリスによるクーデターの第一段階は実働部隊に三日月がくわわったこともあって成功裡におわりました。その報告を石動からきいたマクギリスは自分も動くといい、そこから衝撃の回想シーンにうつります。

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 絶句。
 マクギリスがおさないころにその手を血でそめたというのは三日月とかわりません。しかしマクギリスは力をもとめてそのころのたったひとつの武器である自分の容姿を売りものにするようになりました。そこでファリド家の当主イズナリオにみいだされ、おおぜいいる稚児のひとりにくわわり、努力と才能と上昇志向のおかげでイズナリオの後継者の地位にまでのぼりつめたものの、当然のことながらマクギリスの心がみたされることはありませんでした。
 なにやら『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスを彷彿とさせるおいたちです。そういえば金髪に碧の瞳なのはおなじですね。しかしマクギリスはアッシュにとっての奥村英二のようなかけがえのない存在になってくれたであろうガエリオを自分から裏切り、情よりも力をもとめたわけですが。

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「俺には、まだ力が必要だった。
 そして見つけた。いま、この世界で最高の力の象徴……権力、気力、威力、実力、活力、勢力、そして……暴力。
 すべての力をたばねる存在。ギャラルホルンのトップ、アグニカ・カイエル……真理を」


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 タービンズをめぐるあれこれの件で謹慎処分をうけたクソカスのイオクがマクギリスのクーデターを鎮圧する任務に参加できるようクジャン家の郎党連中がラスタルに直訴しました。これでちょうど四十人目とのことです。あんなクソカスのどこがいいのか、それともギャラルホルン全体をみわたせばイオクみたいなクソカスが聖人君子に見えてしまうのか。もし後者だとしたらマクギリスがその真情はどうあれギャラルホルンを変革するのを否定しづらくなるし、ファリド家の郎党どもがマクギリスのクーデターによろこんで参加するのもうなづけます。イオクが聖人君子ならマクギリスは神話の英雄でしょう。

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 マクギリスはとうとうおめあてのもとにたどりつきました。ガンダムバエル。しかしガエリオはアグニカ・カイエルとよびます。その真意はしばらくあとで判明するとして。

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 なんということでしょう。まさかあのヴィダールの正体が第一期のラストでマクギリスに殺されたはずのガエリオ・ボードウィンだったとは! 最大級の衝撃的事実です、ここ五分くらいで。

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 ガエリオはあらゆる分野で自分よりも優秀なマクギリスの友だちになりたいとねがい、それがかなったと思ったら結局はマクギリスに利用されていただけでした。しかしマクギリスをねたむこともなく、出自を鼻にかけることもなく(マクギリスがファリド家の人間だと思いこんでいただけかも)、相手の悪い面がぜんぜん目にはいらないガエリオは、いい意味での貴種でありお坊ちゃんです。
 ところでいま思ったのだけれどマクギリスの生いたちや性格を考えれば、底抜けに人のいいガエリオのことを心の底では縊り殺したいほどに嫌っていたんじゃないんですかね。モグラが太陽を憎悪するように。

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「おかげで決心がついたよ。愛情や信頼、この世のすべての尊い感情は、おまえの瞳にはなにひとつうつらない。おまえが理解できるのは、権力、威力、暴力、すべて力に変換できるもののみ。ここにいるということは、乗れるのだろう。
 バエルに乗れ」

「てっきりとめるのかと思っていたが。俺がこれを手に入れることの意味、わかってるんだろう。
 それとも一度は死んだ身、なにも失うものはもたないと?」

「いや、逆だ。いまの俺は多くのものを背負っている。しかしすべて、おまえの目には永遠にうつらないものたちだ。おまえがどんなに投げかけられても、受けいれようともせず否定するもの。
 それらすべてを背負い、この場で、假面をはずしたおまえを全否定してみせる」


 どうやらガエリオはこれまでずっとマクギリスのことを観察していて、その正体を自分なりにつきとめたと確信できたからこそ自分の姿を相手に見せるつもりになったのでしょう。そしておそらくマクギリスが人として尊敬に値する男だと信じられれば、カルタや自分にしでかしたことを水に流すかはさておきすくなくとも保留して、マクギリスのクーデターに参加したはずです。しかしマクギリスが力を得てやることといえば破壊しかないと判断した。だからマクギリスに敵対するし相手を全否定すると宣言したのです。劇場版ナデシコの月臣元一朗のことばをかりるなら
「たしかに破壊と混沌の果てにこそ新たなる秩序は生れる。それゆえに産みの苦しみを味わうは必然、しかし。
 草壁に徳なし」

ということでしょう。マクギリスに徳なし。
 だいたいガエリオがマクギリスを本気で失脚させるつもりならかんたんな話でした。親父のところへ顔を出してマクギリスのこれまでの所業をあらいざらいぶちまけたらそれですんだはずです。それをやらなかったのは、マクギリスのギャラルホルンを改革するという意志に大義があるかどうかを見きわめたかったからです。そして妹のアルミリアになにも知らせずマクギリスの婚約者のままでいさせたのも、マクギリスは妹を決して悪いようにはしないだろうと信じていたからにちがいありません。
 あれほどの目にあったというのに実のところガエリオは根っこのところでは何も変っていません。人のいい御曹司のままです。しかし甘ちゃんもここまで筋金入りだとキライにはなれません。

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 バルバトス推参。
 三日月の空気をよまないところは好きだけれど今回ばかりはしゃしゃりでてくるんじゃねえと画面にツッコみました。この場の主役はあきらかにガエリオとマクギリスであって三日月は御邪魔虫の第三者です。てーか三日月はマクギリスともガエリオとも命と信念をかけての戦いをするほどの因縁がないんですよね。ラストバトルの相手がだれになろうとイマイチ盛りあがらないんじゃないでしょうか。
 なおガンダムヴィダールはやっぱりアイン搭載で、そのおかげでガエリオは三日月と互角に戦えるのでした。ところでギャラルホルンのちょっとマッド入ってる整備士によればガエリオはアインを介することで脳への負荷なしに阿頼耶識をつかえるらしいけれど、あれだけの戦闘力をリスクなしに得られるってのはちょっと虫がよすぎませんかね。やっぱり戦闘が長時間つづいたり劇甚をきわめるものになったりすればガエリオの四肢のひとつくらいはもってゆかれそうな気がします。このアニメ、そういう世界観だもん。

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 で、三日月がガエリオの相手をしているうちにマクギリスはガンダムバエルを起動しました。ギャラルホルンの創設者アグニカ・カイエルの魂がやどると説明されたので、要するにアイン搭載のガンダムヴィダールみたいなものでしょう。それをマクギリスが操縦できるようになったのがアインの阿頼耶識施術のデータのおかげなのだから皮肉な話です。マクギリスは運命などとつごうのいいことを言っていましたが。

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 アインの力をかりてもバルバトスとバエルを敵にまわしたのでは分が悪いとガエリオは退却しました。かつてヴィダール時代にマクギリスをまえにしてもジュリエッタとの合流を優先したことといい今回のことといい、ガエリオはずいぶん冷静です。
 で、退却するにあたってガエリオはむかし火星で三日月と出あったときに阿頼耶識システムについて拒絶反応をしめしたことについて謝罪のことばをのべました。律儀というかなんというか。三日月は絶対にそのことを根にもっていやしないのに。つーか完全に忘れているはずです。
 ところでガエリオのこのあたりの一方通行的善意は第一期のクランク二尉とあんまりかわりがありません。まあ三日月は三日月で相手の思いを汲むつもりなんてさらさらなくて自分のやるべきことをやるだけなのだからお互いさまではあります。もしガエリオが退却しなければ「べつにいいよ。どうせあんたはここで死ぬんだから」とか言ったにちがいありません。このアニメはクーデリアみたいな健全な常識人をのぞけばメインキャラはみんな最初からわかりあうことを抛棄しています。

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 で、ガンダムバエルの操縦者はギャラルホルンの頂点に立つ者だとマクギリスは演説をぶちます。ラスタルがバエルをさして錦の御旗といったので、マクギリスのことばにウソはないのでしょう。しかし三百年も封印されていたような機体をまえぶれもなしにもちだしたところで心からマクギリスにしたがおうと考える者はすくないのではないでしょうか。明治維新で天皇が錦の御旗になったのは、神代からつづくとされる皇室の神聖性にくわえ、江戸時代に知識人のあいだでひろまった朱子学と国学、ペリー来航に端を発する外圧、諸外国への幕府の対応への不満など、とにかくいろんな要素があったからです。もうちょっと視聴者を納得させられるだけの段取を脚本家にはふんでほしかった。

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 時をおかずしてガエリオもその顔をさらして逆賊マクギリスを討つと宣言しました。ガエリオの父の呆けたようなような表情が印象的です。無能ではあっても善良な人なのでしょう。ガエリオのお人好しの性格はたぶんに父ゆずりかと思われます。
 ところでマクギリスとガエリオはともにギャラルホルンの改革をこころざしているはずです。そのちがいはといえばマクギリスは急進的改革派でガエリオは漸進的改革派といえましょう。かつてのガエリオは自分もマクギリスも次世代のセブンスターズなのだから、このまま経験と実績をつんでゆけばギャラルホルンの実権をにぎることは確実であり、その立場をもちいて問題点を改善してゆけばいいと考えていたのでしょう。それが旧体制の領袖ともいうべきラスタルの配下になるというのは、マクギリスと戦い功績をあげることで戦後のセブンスターズ内での発言権を増し、のちのちのギャラルホルン改革のための地盤づくりをもくろんでいるのだ、と思いたい。
 ところでマクギリスのクーデターに参加した将校のなかにはおそらくボードウィン家の郎党もいるはずです。ガエリオがマクギリスの盟友だった件でマクギリスにことばたくみに派閥に組みいれられたのが、ガエリオの生存を知って離反するような展開になったら熱い。
ボードウィン兵A「ガエリオ様のおことばを聞いたか。俺たちはマクギリスにだまされていたんだ。いまからでもおそくはない、あのかたのもとに馳せ参ずるぞ」
ボードウィン兵B「だがマクギリスはバエルの操縦者じゃないか」
ボードウィン兵C「俺たちの主は三百年まえのアグニカ・カイエルではない。いま生きていらっしゃるガエリオ様だ!」

とかいうやりとりでもあろうものなら俺は感涙にむせびます。



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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第42話 「落とし前」 

 「復讐」なんかをして失った姉が戻るわけではないと知ったフウな事を言う者もいるだろう。許す事が大切なんだという者もいる。
 だが、自分の肉親をドブに捨てられてその事を無理矢理忘れて生活するなんて人生はあたしはまっぴらごめんだし……あたしはその覚悟をして来た!
 「復讐」とは自分の運命への決着をつけるためにあるッ!

 冒頭ナレーションで名瀬のかたきうちについてあれこれ語っていたけれどイマイチうまいと思えなかったのでエルメェスの名ゼリフにかえてみました。こういうのをしゃべるのが女だとドスがきいていなくていけません。やはりエルメェスみたいな兄貴でなければ!

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 OPが終ったら舞台はすでに戦闘のさなかでした。鉄華団はいつにもましてひとりひとりが獅子奮迅のはたらきを見せ、テイワズのナンバーツーのジャスレイの子分どもを相手に圧倒的優勢に戦いをすすめます。
 こういうのはこのアニメの定型ですね。大物風をふかせるキャラがいても、いざそいつが鉄華団の敵として実際に干戈をまじえる事態になると案外モロくて、戦うまえに心配していたような被害がぜんぜんでないパターンがおおい。結局のところ鉄血世界の実力者はみんな張子の虎で、世界がうすっぺらなハリボテに見えてしまうというのが難点です。
 だが今回ばかりはそれでいい。仇討の相手が意想外に強くてこちらの被害も甚大だとか、妙にねばられて視聴者にストレスをたまらせるよりはボッコボコにやられてゆくほうがスカッとしていい。

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 ハッシュが三日月に戦場をまかされたときの顔がイタチのコラ画像を聯想させるのでならべてはってみました。連載中はいいたいことをいったけれど『NARUTO』は偉大な漫画です。コラ素材として。

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 麾下の部隊はたよりにならず、水面下で同盟をむすんでいるはずのイオクからは聯絡がないときて、絶対的な優位にあるという確信が足もとからくずれはじめたジャスレイは、ヒューマンデブリ部隊を投入しました。阿頼耶識もちなので平凡な傭兵よりは腕がたつものの歴戦の強者ぞろいの鉄華団にはやはり歯がたちません。で、リーゼントはおなじヒューマンデブリの出身どうし思うところがあるのではないかとダンテやチャドにそれとなくたずねたけれど相手の返事は冷静なものでした。
 かれらのクールさに故障を申したてるつもりはありません。実際問題として相手が何者であろうと現時点では敵であり自分を殺すつもりでかかってくるのだから情け無用に戦うのはむしろ当然です。しかしそれとはべつに、鉄華団の活躍がヒューマンデブリの大量投入をうながしたという背景があるわけで、そういう要素をいかさずにチャドらにしゃべらせるという脚本には不満があります。このアニメは設定や説明がものがたりにうまく聯結していない印象をしばしば感じます。

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 ジャスレイのマヌケ描写、つづく。マクマードを蹴落してテイワズの親分になるつもり満々だったのにケツに火がついたから子分のすすめにしたがってマクマードに鉄華団への仲介をたのんだものの先方はなにもかもお見通しでしたとさ。マクマードの親父さんよ、その手際のよさをもうちょっとでいいから名瀬が死ぬまえに発揮できなかったのかねえ。ギャラルホルンとの手打に名瀬の命が必要だったとはいえ、そこをどうにかするのが圏外圈最強の男の腕の見せどころだろうよ、と無茶を承知で言いたくなります。

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 腹の底から「ザマミロ&スカッとサワヤカ」の笑いが出てしょうがねーぜッ! という感じでジャスレイが天誅をくらいました。あえていうならもうちょっとジャスレイがブザマにみじめったらしく任侠としてのプライドも何もかもほうり捨てて命乞いしたあげくにブッ殺されてくれたらさらによかった。てーかジャスレイの左右の子分どもがオタオタするばかりでなく「考えてみりゃ悪いのは全部オジキなんだからコイツの首をさしだせば俺たちの命ばかりは助かるかも知れない」とソロバンをはじいて見苦しさMAXの内輪もめをやってくれるんじゃなかろかと期待したのだけれど結果はごらんのとおりで連中はずっと無能な取りまきのままでした。まあ無能な取りまきにすぎないからジャスレイなんぞの左右にいるのだろうけどさ!
 というわけでスゲーッ爽やかな気分だぜ。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~~~~~ッといいたいところだけれど去年の古いパンツの臭いをもちこしたような不満ものこります。ジャスレイ陣営がこれほど弱っちい連中だというのなら名瀬は自分の首を唯々諾々とギャラルホルンにさしださずに鉄華団と共闘してテイワズをのっとっちまえばよかったのではないかと思ってしまいます。ただでさえタービンズはテイワズ傘下でも武闘派でならしていたのだし、それに命知らずの鉄華団が加われば天下無敵でしょう。なあにマクマードの親父さんを電撃的に監禁拘束してテイワズの相違というかたちでジャスレイを破門してしまえば勝利は確実、ギャラルホルンのほうはどうにかなったんですよ。たぶん。きっと。
 もちろんそんなことを提案されても名瀬は首をタテにふらなかっただろうし、あとだしジャンケンだとわかってもいるけどさ! 死んだ子の年をなんべんだって数えたくなるさ! 名瀬とアミダの人生やラフタの将来と、ジャスレイみたいなクソカスの命とじゃ、どうやったってつりあいがとれねーよ!

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 マクギリスがこのタイミングでとうとう蹶起しました。ギャラルホルンの腐敗を糺弾し、ラスタルがガランとつながっていたこと、イオクがタービンズの非戦闘員を虐殺したことを公表してみずからのクーデターの大義名分とします。こうしてギャラルホルン攻撃の根拠となったのだから名瀬が死んだことは無駄ではなかった、とは思えません。むしろ逆に、名瀬の死はマクギリスの道具のひとつにすぎないわけで、タービンズも鉄華団もしょせんはギャラルホルンという巨大組織の勢力あらそいに利用されるコマでしかないのだというむなしさを痛感するばかりです。それでも鉄華団は名瀬の仇討ちのためにテイワズの盃を返上したうえはマクギリスにすべてを賭けるしか道はなくなったのでした。



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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第41話 「人として当たり前の」 

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「ラフタが殺された……!」

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「は……?」

 昭弘の放心したようなリアクションに心の底から共感する……
 虚脱感がひどいのでこれ以上レビューを書く気力がわきません。三日月とアトラのやりとりすらかすんで見えます。
 しかし昭弘は実の弟や血のつながらない家族につづいて恋人候補まで殺されたわけか……脚本家はガチムチになにか深刻な恨みでも蔵しているのでしょうか。




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