保険 アリコ Moon of Samurai 空から女の子が降ってきた 第五作「代償」

空から女の子が降ってきた 第五作「代償」 



【降臨賞】空から女の子が降ってくるオリジナルの創作小説・漫画を募集します。

条件は「空から女の子が降ってくること」です。要約すると「空から女の子が降ってくる」としか言いようのない話であれば、それ以外の点は自由です。

http://q.hatena.ne.jp/1231366704



 面白そうな企画だったので参加することにしました。一晩考えて五つばかり話が思い浮かびました。投稿制限ってありましたっけ。
 最後に第五作「代償」です。




 皇帝がお抱え料理人に死刑を宣告した。熊の手をよく煮ていなかったのが罪状だった。刑は翌日に執行されることになった。どうか御慈悲を、と大臣たちが代わる代わる皇帝を諫めた。空から女の子が降ってきたら赦免してやろう、と皇帝は答えた。
 皇帝としては馬に角が生えればとかカラスの頭が白くなればとか言ってもよかった。無理難題をふっかけるのが目的だった。結局、料理人は処刑されるだろう。いつも通りの展開が繰り返されると思うと興趣は大いに殺がれた。そこで料理人の一人娘を自室に呼び付け、朕はそこもとの父を誅すると決めた、ただし空から女の子が降ってきた場合には赦すことにした、人選については条件をつけていない、と言い、そういえば処刑場のすぐそばには飛び降り自殺に打ってつけの尖塔があったな、と附け加えた。料理人の娘は総身を震わせて退出した。皇帝は料理人が娘を自分の命よりも大切にしていることを知っていたし、娘が父親を誰よりも愛していることも知っていた。皇帝は哄笑した。
 翌日、皇帝は処刑の場に臨席した。首切り役人の斧が料理人に振り下ろされようとしたそのとき、尖塔の頂上に人影が現れて身を躍らせて処刑場に降って来て料理人のすぐそばの地面に叩き付けられて即死した。皇帝は笑い出したいのを堪えて左右の役人に墜落死体の身許を確かめるように命じた。死体の正体は料理人の娘ではなかった。皇帝が目に入れても痛くないほどに可愛がっていた一人娘だった。皇帝は地面が崩れ落ちるような浮遊感を覚えた。
 そこへ料理人の娘が進み出て言上した。昨夜の一件は姫様に聞かれておりました、姫様はつねづね陛下のなさりようにお心を痛めておいででした、お部屋から下がった私を衛兵に拘束させ、ここに至っては自らの命をもって父上をお諫めします、とおっしゃられたのです、と。皇帝は深く後悔した。
 皇帝は人が変わったように寛容になった。善政を敷き、臣民に慕われるようになった。皇帝の執務室には彼の愛娘が空から降ってくる様を描いた絵画が今も掛けられている。


コメント

こんな短い文章でも
判り易く尚且つ毒気のある内容が
完成されているなんて…

楽しく読ませて頂きました。

三作品まで見て全部ジョーク系と思ってたのに・・・
自分は、条件からこうなる発想ができませんね

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