今週のジャンプ一コマレビュー 2008年15号
大いなる助走。直木賞を三度逃したSF作家・筒井康隆氏の憤懣が凝り固まって出来上がった長編小説です。今週のジャンプで打ち切られた『K.O.SEN』を読了語、ふとタイトルだけ思い出しました。
「俺たちの戦いはこれからだ!」式の典型的な打ち切りエンディングです。これで現在ジャンプに連載されているスポーツ漫画は『アイシールド21』だけになってしまいました。
この作品、絵柄は地味でしたが画力はかなり高かったし、キャラ一人一人に個性があったし、主人公が熱血バカという点も悪くありませんでした。もっとも大きな敗因要素は格闘漫画なのにろくに格闘しなかったことでしょう。生涯のライバル(になるべきはずだったキャラ)たちとの練習試合を除けばただひたすらに練習練習練習。あとメインエピソードの合間に挿入すべきサブキャラ話を序盤に消化しようとしたのも読者に散漫な印象を与えてしまいました。
ここで勝手に分析してみます。Wikipediaによれば作者の村瀬克俊氏は格闘技観戦が趣味で、デビュー作を除けば一貫してキック漫画を描き続けてきた人です。格闘技には基礎が大事だということを知っているからこそ練習シーンを省略しなかったものと思われます。しかし現実としてのリアルと漫画的リアリティとは似て非なる物なのです。
ドラマとは葛藤だとよく言われます。主人公と環境とが衝突を起こし、何らかのアクションをとらなければならない。その結果、新しい問題が発生して主人公はまたもや行動する。この積み重ねでドラマは構成されています。バトル漫画だと環境が敵として登場し、アクションはバトルとして視覚的に処理されるから読者にも分かり易いんです。
言うまでもないことですが、バトル漫画とはバトルこそが柱なのです。他の要素は刺身のツマ。主人公が練習をするのは、あくまでも勝利のリアリティを増すための補強要素です。ジョジョなどは第三部以降、修行シーンは皆無ですが読者から文句を言われないのはひとえにバトルが面白いからです。というわけで現実に即して練習シーンを描きすぎるとバトル漫画としては中だるみしてしまうので適当なところで切り上げ、実際には準備不足でも早めにキックボクシングの試合をしていた方が良かったと思われます。
『はじめの一歩』のように練習シーンそのものが面白いとか、梶原一騎のスポ根もののように珍妙奇天烈な練習と種明かしをセットにして推理小説的エンターテイメントを用意するとか、単体としての魅力があったら話は別だったでしょうが。前者は「真面目にやれば日本チャンピオンくらいにはなれる」と言われるほどに現実的で、後者は素人でもツッコミどころ満載の荒唐無稽な内容ですが、どちらも面白いことに変わりはありません。
結論。つまらない現実よりは素晴らしい虚構。エンターテイメントにおいて偽物は時に本物を上回る価値を持つのです。
偽物万歳。
……あれ? なんか話が違ってなくね?
- [2008/03/11 23:11]
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