保険 アリコ Moon of Samurai 今週のジャンプ一コマレビュー 2008年14号

今週のジャンプ一コマレビュー 2008年14号 

 やっつけ感がものごっつい漂う最終回でした。

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 一仕事やり終えた男の顔になる幸村。
分身魔球でなくてガチで二つに割れたテニスボールを同時に打ち返したのです。テニスのルールは不問に付すとしてもボールの材質とか弾力とかの意味で返球可能なんでしょうか。
 しかし今回は最終回です。ついにテニスの王子様が神の子を超えました。幸村が返したボールの切れ端は二つともリョーマの頭上に飛んできました。これは偶然ではなく、リョーマがついにテニプリ世界でも難易度Sクラスの絶技・手塚ゾーンに開眼したことを示しているのです。最後の最後でようやく樺地と並んだか。

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「この1点を見極めろ!!」

 誰に言っているのかも何が言いたいのかも激しく意味不明のメッセージです。
こんなのがラストショットに乗せて放つ言葉でいいんでしょうか。とにかくボールの切れっ端二つは幸村の左右に打ち分けられてコートに突き刺さりました。

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「ゲームセット、ウォンバイ……越前リョーマ6-4!!」

 まるでそれが自明の理であるように普通に決着を見ました。

 昔、マガジンに『Hot Shot』というビリヤード漫画が連載されていて、ビリヤード台が傾いているという設定で主人公をネチネチいたぶっていた噛ませ犬がいたのですが、自分が不利になると途端に手の平を返して試合の無効化を叫びました。それを考えるとテニプリ世界の試合はまことに潔いものです。誰も騒がず喚かず、審判の決定に粛々と従う姿は、まるで過酷な運命を甘受するギリシャ悲劇の主人公のようです。男の勝負に言葉はいらん。ただそれだけのこと……!!by雷電
 とまれかくまれ、青学は全国大会の決勝に勝利したのです。全国の中学校の頂点に君臨したのです。選手たちがコートに集まってリョーマを胴上げします。万感の思いに浸っていると不意打ち気味に許斐節が炸裂しました。

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 Get ready 会いに行くよ
 Get ready 理由はいらない
 Get ready 頑張ってる
 Get ready トコロが大好き

 Ready,go! 手をつなごう
 Ready,go! 逃げ腰なキミへの
 Ready,go! プレゼントだから
 Ready,go! 立派にやれるさ

        あ
        り
        が
        と

        て
        に
        ぷ
        り

 突拍子もなく自作のオサレソング(JASRAC申請中)を流して最終回の貴重な五ページを消費してしまったのです。
そこはかとなくやりきれない想いが胸に去来するのは何故? 縦読みも一部の歌詞にしか使用されていないので中途半端な印象が否めません。しかし想定外の事態であったことだけは事実です。所詮、我々は許斐先生の手の平の上の孫悟空に過ぎないのかッ……!
 そして歌が終わると一年が過ぎていました。青学テニス部の部長は桃城ではなく海堂が選ばれていました。青学の選手層は旧三年を除けばティッシュペーパーのように薄いので新生テニス部の苦難が予想されます。
 でも海堂と桃城、そして天下無敵の越前リョーマさえいれば地区予選レベルなら三勝は確定しているので当面は安心です。と思いきや、先輩二人は遠い目をしながら語りを始めました。その対象は海を越えてアメリカに渡った……

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 たまたま手頃なイジメ相手を発見していた越前リョーマでした。
 青学の柱になるんじゃなかったのかよオマエ!? と地球の裏側の王子様にツッコミを入れたくなるのは解ります。しかしリョーマの単独渡米は、無我の境地の第三の扉を開けてしまった男に科せられた悲しい宿命のなせる業だったのです。
 思い出してください。天衣無縫の極みを発動させるにはテニスを純粋に楽しむ気持ちが必要だったことを。そこには他の要素が介在してはなりません。勝利のためでもなく、他人のためでもなく、ましてやチームのためでもなく、ひたすらに己のエゴイズムに殉じてプレイし続けなければ第三の扉は閉じてしまうのです。
 そして青学の柱になるということはつまり、己を殺して味方プレイヤーにも真っ向勝負を禁じ、ただひたすらに勝利を求める、チームの大黒柱を演じなければなりません。かつて幸村がそうしたように。
 だからこそ青学のメンバーは自分たちの栄光よりもリョーマの幸福を考え、彼に本当の意味でテニスを楽しめる道を歩ませると決めたのです! たぶん。

 こうして『テニスの王子様』は九年間の連載を終え、大団円を迎えました。この漫画も最初はリアルなテニス漫画として出発しました。しかし、やがてテニス漫画ではなくテニプリ漫画としか分類できないような作品へと進化していきました。最終的にはシリアスとギャグの彼岸を超えて前人未踏の領域にまで辿り着いたのです。後続が誰一人として続きそうにないところが許斐先生の偉大さを如実に表しています。

 許斐先生。今まで楽しい時間を提供してくれて、本当にありがとうございました。




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