保険 アリコ Moon of Samurai 『フルメタル・パニック!』せまるニック・オブ・タイム

『フルメタル・パニック!』せまるニック・オブ・タイム 

 フルメタ最新刊を読了。ここ最近はラノベの新作もほとんど読まなくなって、このシリーズを除けばハルヒと『バカとテストと召喚獣』くらいになってしまいました。そんなフルメタも長編は残すところ後一巻(予定)です。そのため、これまで巧妙に隠されたり、意味ありげな伏線として登場したりしてきた謎が次々と明らかになりました。フルメタの世界が我々のそれとは異なる理由。ウィスパードたちの生年月日が同じである理由。あるはずのないブラック・テクノロジーが厳然として存在している理由。そして、クルツの過去。
 ここから先は作品の核心に触れる内容が満載です。ネタバレ全然OK、もしくは既に読み終わったぜという方はお進み下さい。そうでない方は一刻も早く賀東先生と富士見書房に620円(税別)を寄付してからカモンマイシスター。男は知らん。



 クルツが死にました。
 フルメタは長編第二巻が発行された頃から読んでいるので、登場人物たちとはそろそろ十年近い付き合いになります。それだけに彼の死による喪失感も、他の作品のキャラの場合よりも大きなものがあります。作中ではマオとくっついたり師匠が出て来たりして死亡フラグをきっちり立てていたので半ば予測してはいましたが、それでも一六五〇メートルの超長距離狙撃を成功させて虚無の闇に落ちたクルツの最期には衝撃を受けました。目を瞑れば、今でもクルツの姿が眼前に浮かんできます。
 テッサたちの嬌声に聞き耳を立てて鼻血を流すクルツ。
 女湯を覗くために全力を傾けるクルツ。
 セントリーガンで尻を焼かれるクルツ。
 下半身赤パン一丁で倒れるクルツ。
 何でアニメ第二期の「女神の来日(温泉編)」[A/B]ばかりなんだよ、という声は聞こえません。


 十八年前の十二月二十四日のグリニッジ標準時十一時五〇分、オムニ・スフィア増幅装置TAROSが暴走して強力な精神派が放出された。そのとき産まれた新生児の約三パーセントが影響を受けて「ささやかれる者(ウィスパード)」になった。ウィスパードが受け取る“ささやき”にはブラックテクノロジーに関する知識が含まれ、その結果として世界は本来とは別の道を歩み出した……。
 レナードの真の目的は、ブラックテクノロジーのために歪んだ世界を是正することでした。しかし宗介は自分の過去を否定しないためにも、レナードの行動を阻む決意を変えません。周囲の現実の全てを認め、困難を打破するために全身全霊を賭けて戦い、その果てに自身が死ぬとしても敢然と受け止める。それが戦士の不文律。
 しかしその不文律は戦士としての覚悟も矜恃も抱く機会を与えられず、本来とは違う運命を容赦なく押しつけられた女性にも適用されるべきなのか。カリーニン少佐がミスリルを裏切ってレナードに従ったのは、おそらく彼の妻イリーナの死が影響しているのでしょう。
 世界が間違ったおかげで愛する女性と出会えた宗介。世界が間違ったせいで愛する女性を喪ったカリーニン少佐。二人はコインの裏表です。


 あと、我が意を得たりと感心した一節を紹介してみます。

 平坦な砂漠での、戦車部隊相手の戦闘。これはアーム・スレイブという兵器が最も苦手とする状況の一つである。
 いくら先端技術の結晶であるAS(アーム・スレイブ)であろうと、戦車の走行と火力には絶対にかなわない。強力な戦車砲の砲弾を跳ね返すことは出来ないし、標準的なアサルトライフルでは戦車を正面から撃破することもできない。
 『前面投影面積』――正面から見た面積の大きさは言わずもがなだ。
 地を這うように移動する戦車に比べ、直立歩行するASというヴィークルは発見されやすいし、被弾もしやすい。ASの最大の強みである運動性を発揮して、複雑な地形を利用し接近することも砂漠では難しい。
 戦車とまともに正面から撃ち合って、勝てるわけがないのだ。


 人型兵器は究極的には役立たずであることを情け容赦なく暴露しています。大半のロボット物では無視されるか、それ以前に制作陣が全く気づいていない冷厳な事実をきっちりと見据え、それでも様々な設定を捻り出してASが兵器として存在できるだけのリアリティを構築する賀東先生に最敬礼。


 最後に、唐突ですが『フルメタル・パニック!』のエンディングを色々と考えてみました。お遊びなので目くじらを立てずに御覧下さい。



   ありがちエンド

 クルツは死んだ。マオも死んだ。テッサも死んだ。宗介は目の前で殺された。絶望したかなめは世界をリセットした。ブラックテクノロジーは伝えられず、世界はあるべき姿に戻り、全ての記憶は失われた。
 そして1999年。善良なオタク少年として幸福に生きる相良宗介は髪の長い活発な少女と出会う。面識はないはずなのに、二人は心の奥底で不思議ななつかしさを覚えるのであった。


   ハーレムエンド

 オムニ・スフィアが物凄く都合良く発動した。クルツやカリーニン少佐の妻やテッサの両親や、その他全員が蘇った。結果、かなめとテッサとナミとミラのウィスパード四人娘は相良宗介を巡って熾烈な争奪戦を繰り広ることになった。一方レナードは復活したバニ・モラウタとホモ達になった。


   ぢぢいエンド

 ケヴィン・スカイレイ退役海軍中将が第七機動部隊を統御して制空権を奪取した。トーマス・ロス退役海軍少将が潜水艦隊を率いてアマルガムの退路を断った。ロイ・シールズ退役海軍大佐がSEALSを指揮して浸透戦術を発揮した。ジョン・ジョージ・コートニー退役海兵中佐が海兵隊とともに敵を無力化した。
 そして史上最強の用務員・大貫善治がベヘモス十二機を三分で全滅させた。ベリアルを墜とす際に頭部を破壊されるが、メインカメラがやられただけなので五分で再生した。
 アマルガムは壊滅した。テッサは月曜日はブルマー、火曜日は巫女装束、水曜日はスクール水着、木曜日はセーラー服、金曜日はスモック、土曜日はメイド服、日曜日はバニースーツを着てファックでシットなオールドヤンキー四人のために奉仕するのであった。あと宗介は養鯉家になった。


   ぬこエンド

 メリダ島に足を踏み入れたレナード様ご一行はベンガルトラのシロのお昼ご飯に化けた。その中にはかなめも含まれていたので、宗介はテッサとくっついた。


   装甲騎兵ボトムズエンド

 かなめがソフィアに操られていたと見えたのは演技だった。かなめはメリダ島の中心部に到達し、TAROSを破壊する。ちょうど潜入していた宗介と手に手を取って愛の逃避行。しかし二人に安息の地はないのでコールドカプセルに入って永遠に宇宙をさまようことに決めた。
 ちなみにレナードが何の脈絡もなく金髪小太り男に変貌して叫ぶ。

Leonard

「せっかくの権利を捨てて、卑しい道を選んだのは恐怖からだ! 支配することの余りの大きな重さに、お前は怯えたのだ! 私があれほど望んだ力を、お前は殺したのだ! 私が、私がウィスパリングであったなら! 私が、ウィスパリングであったなら……!!」



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コメント

クルツの死に方うさんくさすぎる。死体回収してないし多分レイスあたりがたすけたんじゃないですかあれ。いや希望的とかじゃなくてまじで。

>>我が意を得たりと感心した一節

これは当方も大いに感心しました。
「人型ロボットが兵器として通用する世界観」の演出では
フルメタはかなり上手い作品に入ると思います。


>>史上最強の用務員・大貫善治がベヘモス十二機を三分で全滅させ

思いっきり吹きましたwww
それにしても賀東氏があとがきで書きそうな文面を
上手く再現してますね(^^;

確かに賀東先生のリアリティを追求する姿は素晴らしいです。
サイドアームズを読んでても思いましたが、技術が確立したら本当に出てきそうですよね、AS。

>あと、我が意を得たりと感心した一節を紹介してみます。
本当にコレには驚きましたね
それでも尚兵器としての実用性を見出す賀東先生は凄すぎです

しかしどんな形でアレ、ハッピーエンドを願わずにはいられない展開です
例えここで真のラスボスが登場して
宗助たちが金色に輝きながら突撃する事になろうとも…

あと、「装甲」が「走行」になってますよ

ありがちエンド(その2)
初代TAROSの怨念に操られたかなめとレナードが世界を改変しようとする。辛うじて世界の改変を防いだ宗介の前でかなめは言う。「私はこれから過去のウィスパード達に、ブラックテクノロジーを伝えることにする。そうしないとASが生まれないから。そうしないとミスリルとアマルガムの闘争も存在しなくなるから。そうしないと私たちが出会うこともなくなるから。それだけは絶対に嫌。」


>おそらく彼の妻イリーナの死が影響しているのでしょう。
これは父と母に守られて九死に一生を得たテッサと、
我が身かわいさに母に捨てられたレナードも。

>クルツの死に方うさんくさすぎる。死体回収してないし
一応クルツ自身も自分でも助からないと判断してるので、さすがに死んだのでは。

つか第二世代ASですら平地なら120km/h〜200km/hはでることになっている
M9なら250km/h以上だ
何もない平地の砂漠なら戦車砲の射程にはいるまえに発見できるし
1000m以上距離があれば戦車砲の初速度であっても着弾までに避けるだけの時間は十分ある
しかも連射は効かないから機動性でAS中隊に攪乱されたら
遮蔽物のない平地でも戦車隊が負けるぞ

M9くらいなら前面投影面積いぜんに戦車が鈍重だ

ま、実際そんなのつくれないから戦車がつよいわけだが

戦車の走行にって
自分で設定作って忘れてんのかこの作者

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