シグルイ 第45景「赤縄」
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牛鬼モード開眼中の牛股師範。おかげで仇討ち場はそれこそ斗貴子さんが感極まって虎眼流に弟子入りを申し込みそうなくらいの勢いで臓物(ハラワタ)がブチ撒かれ放題。カラーで描かれていたら三日はトマトと肉料理が喉を通らなかったことでしょう。
フィジカル面では実害の無かったギャラリーも精神的には大ダメージを追っています。盲目の賎機検校でさえ恐怖にプルプル震え、女性のいくはたまらずその場で嘔吐。ライバルの藤木に辛勝した伊良子はヘタレなので冷や汗を流しながら推移を見守っています。掛川藩の宿将・孕石家老はさすがに取り乱したりはしませんが青二才のドラ息子は覚悟完了を済ませていないのでいくと同様に胃のものを戻しながら父親に訊ねます。齡十三にして下女三人を孕ませた色男が台無し。
分類学の始祖リンネだって牛股師範をホモサピエンスの範疇に属するものと分類するには躊躇するものと思われます。純粋な感情論から言えば全力で願い下げですけど。
そして話は唐突に回想シーンへと突入します。慶長の春、三河ではまだ前髪を残したあどけない少年剣士が桜の木の下で少女と逢引していました。
この桜はきっと、その木の下で告白とかすると恋が実る的な伝説があるというタイプの木なのでしょう。もちろん何からもインスパイアされていない、オリジナリティーあふれる設定です。
ちなみに少年剣士の正体はご想像の通り、幼い頃の牛股師範です。対する少女は、お互い口にこそ出さないものの将来を誓い合った間柄でした。
権三郎くん、美少年ではないものの険のない穏やかな顔立ちをしています。あの狂気を秘めた極大インパクトの笑顔は後天的に得たもののようです。一方、ふくという名の少女は原作小説での牛股師範の細君なのでしょう。コミックしか目を通していない読者の疑問の一つに「なぜ虎眼先生は牛股師範を跡目にしなかったのか?」というものがありましたが、実をいうと彼は妻帯者だったのです。年齢もすでに三十代半ばですし、釣り合いが取れなかったせいで後進の藤木たちにお鉢が回ってきたというのが小説版の設定でした。
ともあれ権三郎がふくにしばらくの別れを告げたのは、その超人的な怪力のせいで地元の道場の師範代を半殺しにしてしまったのが遠因でした。門弟たちからハブられてしまった権三郎を哀れんだ師匠は、無双として名高い道場に紹介状を書いてやったのです。それはもちろん御存知の虎眼流でした。
虎眼先生はまだ掛川藩の剣術指南役に奉職していない時期らしく、当時の道場は尾州に居を構えていました。そこで牛を出迎えたのは虎でした。
実際のところ、危険度は猛獣の方が高いわけですが。
そして虎眼先生は伊良子の時と同様に何の説明も与えず問答無用で涎小豆の儀式を決行します。権三郎もまた強者の卵、虎眼先生の色んな意味での偉大さを肌身に感じ、師匠の命じることなら何でもこなす忠弟になりました。
そして来月への伏線もさりげなく貼られます。
後に牛股師範が独自に開眼することになる秘剣「飛燕切返し」の基礎となるべき修練を三日三晩、不眠不休で延々と行うのでした。
しかし何かを得るためには何かを失わなくてはならないのがシグルイ世界です。虎眼先生は権三郎が“赤い縄”に繋がれたままでいる限り、彼を山中の稽古に連れて行くことはないと宣言するのでした。
赤い縄とは、俗に言う運命の赤い糸のことです。
俺が知る限り、赤縄が登場する最も古い古典は唐代に著されたという『続玄怪録』の「定婚店」です。内容といえばリンク先で確認できるように男の身勝手極まるエゴイズムも男尊女卑の総本山とも言うべき支那では問題なく許容されるというものです(をい)
赤縄の出典の方では釈然としないわだかまりを残しつつもとにかくハッピーエンドを迎えるのですが牛股師範は違います。供の者に任せるような怯懦は見せず、自分の手で確実に恋人を……むーざんむーざん。
そして牛股師範は自分を戒めるため、素手でbullからoxへと変貌するのでした。日本語だとどっちも牛なのですが、細かい違いを知りたい方は英和辞典を引いてください。不精な方のために婉曲に説明すると、牛股師範は散サマになりました。
今川監督でさえ牛に蹴られて三途の川を横断させられてしまうくらいの原作クラッシュぶりです。お美事! お美事にござりまする!
おまけ

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- [2007/05/15 23:59]
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