保険 アリコ Moon of Samurai 機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第43話 「たどりついた真意」

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第43話 「たどりついた真意」 

 マクギリスによるクーデターの第一段階は実働部隊に三日月がくわわったこともあって成功裡におわりました。その報告を石動からきいたマクギリスは自分も動くといい、そこから衝撃の回想シーンにうつります。

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 絶句。
 マクギリスがおさないころにその手を血でそめたというのは三日月とかわりません。しかしマクギリスは力をもとめてそのころのたったひとつの武器である自分の容姿を売りものにするようになりました。そこでファリド家の当主イズナリオにみいだされ、おおぜいいる稚児のひとりにくわわり、努力と才能と上昇志向のおかげでイズナリオの後継者の地位にまでのぼりつめたものの、当然のことながらマクギリスの心がみたされることはありませんでした。
 なにやら『BANANA FISH』のアッシュ・リンクスを彷彿とさせるおいたちです。そういえば金髪に碧の瞳なのはおなじですね。しかしマクギリスはアッシュにとっての奥村英二のようなかけがえのない存在になってくれたであろうガエリオを自分から裏切り、情よりも力をもとめたわけですが。

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「俺には、まだ力が必要だった。
 そして見つけた。いま、この世界で最高の力の象徴……権力、気力、威力、実力、活力、勢力、そして……暴力。
 すべての力をたばねる存在。ギャラルホルンのトップ、アグニカ・カイエル……真理を」


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 タービンズをめぐるあれこれの件で謹慎処分をうけたクソカスのイオクがマクギリスのクーデターを鎮圧する任務に参加できるようクジャン家の郎党連中がラスタルに直訴しました。これでちょうど四十人目とのことです。あんなクソカスのどこがいいのか、それともギャラルホルン全体をみわたせばイオクみたいなクソカスが聖人君子に見えてしまうのか。もし後者だとしたらマクギリスがその真情はどうあれギャラルホルンを変革するのを否定しづらくなるし、ファリド家の郎党どもがマクギリスのクーデターによろこんで参加するのもうなづけます。イオクが聖人君子ならマクギリスは神話の英雄でしょう。

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 マクギリスはとうとうおめあてのもとにたどりつきました。ガンダムバエル。しかしガエリオはアグニカ・カイエルとよびます。その真意はしばらくあとで判明するとして。

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 なんということでしょう。まさかあのヴィダールの正体が第一期のラストでマクギリスに殺されたはずのガエリオ・ボードウィンだったとは! 最大級の衝撃的事実です、ここ五分くらいで。

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 ガエリオはあらゆる分野で自分よりも優秀なマクギリスの友だちになりたいとねがい、それがかなったと思ったら結局はマクギリスに利用されていただけでした。しかしマクギリスをねたむこともなく、出自を鼻にかけることもなく(マクギリスがファリド家の人間だと思いこんでいただけかも)、相手の悪い面がぜんぜん目にはいらないガエリオは、いい意味での貴種でありお坊ちゃんです。
 ところでいま思ったのだけれどマクギリスの生いたちや性格を考えれば、底抜けに人のいいガエリオのことを心の底では縊り殺したいほどに嫌っていたんじゃないんですかね。モグラが太陽を憎悪するように。

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「おかげで決心がついたよ。愛情や信頼、この世のすべての尊い感情は、おまえの瞳にはなにひとつうつらない。おまえが理解できるのは、権力、威力、暴力、すべて力に変換できるもののみ。ここにいるということは、乗れるのだろう。
 バエルに乗れ」

「てっきりとめるのかと思っていたが。俺がこれを手に入れることの意味、わかってるんだろう。
 それとも一度は死んだ身、なにも失うものはもたないと?」

「いや、逆だ。いまの俺は多くのものを背負っている。しかしすべて、おまえの目には永遠にうつらないものたちだ。おまえがどんなに投げかけられても、受けいれようともせず否定するもの。
 それらすべてを背負い、この場で、假面をはずしたおまえを全否定してみせる」


 どうやらガエリオはこれまでずっとマクギリスのことを観察していて、その正体を自分なりにつきとめたと確信できたからこそ自分の姿を相手に見せるつもりになったのでしょう。そしておそらくマクギリスが人として尊敬に値する男だと信じられれば、カルタや自分にしでかしたことを水に流すかはさておきすくなくとも保留して、マクギリスのクーデターに参加したはずです。しかしマクギリスが力を得てやることといえば破壊しかないと判断した。だからマクギリスに敵対するし相手を全否定すると宣言したのです。劇場版ナデシコの月臣元一朗のことばをかりるなら
「たしかに破壊と混沌の果てにこそ新たなる秩序は生れる。それゆえに産みの苦しみを味わうは必然、しかし。
 草壁に徳なし」

ということでしょう。マクギリスに徳なし。
 だいたいガエリオがマクギリスを本気で失脚させるつもりならかんたんな話でした。親父のところへ顔を出してマクギリスのこれまでの所業をあらいざらいぶちまけたらそれですんだはずです。それをやらなかったのは、マクギリスのギャラルホルンを改革するという意志に大義があるかどうかを見きわめたかったからです。そして妹のアルミリアになにも知らせずマクギリスの婚約者のままでいさせたのも、マクギリスは妹を決して悪いようにはしないだろうと信じていたからにちがいありません。
 あれほどの目にあったというのに実のところガエリオは根っこのところでは何も変っていません。人のいい御曹司のままです。しかし甘ちゃんもここまで筋金入りだとキライにはなれません。

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 バルバトス推参。
 三日月の空気をよまないところは好きだけれど今回ばかりはしゃしゃりでてくるんじゃねえと画面にツッコみました。この場の主役はあきらかにガエリオとマクギリスであって三日月は御邪魔虫の第三者です。てーか三日月はマクギリスともガエリオとも命と信念をかけての戦いをするほどの因縁がないんですよね。ラストバトルの相手がだれになろうとイマイチ盛りあがらないんじゃないでしょうか。
 なおガンダムヴィダールはやっぱりアイン搭載で、そのおかげでガエリオは三日月と互角に戦えるのでした。ところでギャラルホルンのちょっとマッド入ってる整備士によればガエリオはアインを介することで脳への負荷なしに阿頼耶識をつかえるらしいけれど、あれだけの戦闘力をリスクなしに得られるってのはちょっと虫がよすぎませんかね。やっぱり戦闘が長時間つづいたり劇甚をきわめるものになったりすればガエリオの四肢のひとつくらいはもってゆかれそうな気がします。このアニメ、そういう世界観だもん。

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 で、三日月がガエリオの相手をしているうちにマクギリスはガンダムバエルを起動しました。ギャラルホルンの創設者アグニカ・カイエルの魂がやどると説明されたので、要するにアイン搭載のガンダムヴィダールみたいなものでしょう。それをマクギリスが操縦できるようになったのがアインの阿頼耶識施術のデータのおかげなのだから皮肉な話です。マクギリスは運命などとつごうのいいことを言っていましたが。

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 アインの力をかりてもバルバトスとバエルを敵にまわしたのでは分が悪いとガエリオは退却しました。かつてヴィダール時代にマクギリスをまえにしてもジュリエッタとの合流を優先したことといい今回のことといい、ガエリオはずいぶん冷静です。
 で、退却するにあたってガエリオはむかし火星で三日月と出あったときに阿頼耶識システムについて拒絶反応をしめしたことについて謝罪のことばをのべました。律儀というかなんというか。三日月は絶対にそのことを根にもっていやしないのに。つーか完全に忘れているはずです。
 ところでガエリオのこのあたりの一方通行的善意は第一期のクランク二尉とあんまりかわりがありません。まあ三日月は三日月で相手の思いを汲むつもりなんてさらさらなくて自分のやるべきことをやるだけなのだからお互いさまではあります。もしガエリオが退却しなければ「べつにいいよ。どうせあんたはここで死ぬんだから」とか言ったにちがいありません。このアニメはクーデリアみたいな健全な常識人をのぞけばメインキャラはみんな最初からわかりあうことを抛棄しています。

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 で、ガンダムバエルの操縦者はギャラルホルンの頂点に立つ者だとマクギリスは演説をぶちます。ラスタルがバエルをさして錦の御旗といったので、マクギリスのことばにウソはないのでしょう。しかし三百年も封印されていたような機体をまえぶれもなしにもちだしたところで心からマクギリスにしたがおうと考える者はすくないのではないでしょうか。明治維新で天皇が錦の御旗になったのは、神代からつづくとされる皇室の神聖性にくわえ、江戸時代に知識人のあいだでひろまった朱子学と国学、ペリー来航に端を発する外圧、諸外国への幕府の対応への不満など、とにかくいろんな要素があったからです。もうちょっと視聴者を納得させられるだけの段取を脚本家にはふんでほしかった。

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 時をおかずしてガエリオもその顔をさらして逆賊マクギリスを討つと宣言しました。ガエリオの父の呆けたようなような表情が印象的です。無能ではあっても善良な人なのでしょう。ガエリオのお人好しの性格はたぶんに父ゆずりかと思われます。
 ところでマクギリスとガエリオはともにギャラルホルンの改革をこころざしているはずです。そのちがいはといえばマクギリスは急進的改革派でガエリオは漸進的改革派といえましょう。かつてのガエリオは自分もマクギリスも次世代のセブンスターズなのだから、このまま経験と実績をつんでゆけばギャラルホルンの実権をにぎることは確実であり、その立場をもちいて問題点を改善してゆけばいいと考えていたのでしょう。それが旧体制の領袖ともいうべきラスタルの配下になるというのは、マクギリスと戦い功績をあげることで戦後のセブンスターズ内での発言権を増し、のちのちのギャラルホルン改革のための地盤づくりをもくろんでいるのだ、と思いたい。
 ところでマクギリスのクーデターに参加した将校のなかにはおそらくボードウィン家の郎党もいるはずです。ガエリオがマクギリスの盟友だった件でマクギリスにことばたくみに派閥に組みいれられたのが、ガエリオの生存を知って離反するような展開になったら熱い。
ボードウィン兵A「ガエリオ様のおことばを聞いたか。俺たちはマクギリスにだまされていたんだ。いまからでもおそくはない、あのかたのもとに馳せ参ずるぞ」
ボードウィン兵B「だがマクギリスはバエルの操縦者じゃないか」
ボードウィン兵C「俺たちの主は三百年まえのアグニカ・カイエルではない。いま生きていらっしゃるガエリオ様だ!」

とかいうやりとりでもあろうものなら俺は感涙にむせびます。



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コメント

クーデリアって健全な常識人かなぁ....

オルフェンズはとにかく主人公の三日月が受動的・無感情すぎるんですよね
過去のガンダムシリーズにも、ヒイロや刹那など感情表現に乏しい主人公はいましたが、
彼らはどこか“熱”があり、成長しているのが見えたのですが、三日月にはそれがない
キャラとして“完成”していると言えるのかもしれませんが、主人公としては魅力に欠けます

またオルフェンズはストーリーの積み重ねが他のガンダム作品と比べてあまり感じられず、
キャラや設定もあくまでストーリー進行のためのものであり、
キャラが考え無しで奇天烈な行動を取ることがしばしば

そんな中マクギリスとガエリオは、野望や信念のためにすべてを振り絞ろう“熱”があるので
良くも悪くもキャラが立っており、魅力的ともいえます

クーデリアが健全な常識人…だと…

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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第43話 『たどりついた真意』 すべてを背負って力を求めるものを倒すって...主人公じゃね?

マクギリスって元男娼?三日月に勝るとも劣らないすさんだ境遇。不幸な身の上から貪欲に力を求めるようになったと。 そして演説した自己陶酔男、鉄華団に現る。ライザ・エンザにドン引きのオルガ達。なんかイオクに似ている、ババがこっちにやってきた感。  やっと会えたな、バエル。アグニカ・カイエルが乗っていたガンダムみたいです。そこにやってきたのはヴィダール。警備どうなってるの。遂に仮面を脱ぎ捨...

  • [2017/02/17 19:20]
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  • こいさんの放送中アニメの感想 |
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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ♯43「たどりついた真意」

評価 ★★☆ 大人になれない僕らのわがままをひとつ聞いてくれ           

  • [2017/02/18 21:59]
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  • パンがなければイナゴを食べればいいじゃない |
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