今週のジャンプ一コマレビュー 2014年30号
・『暗殺教室』
タ、タラシにっ! いまジャンプでいちばん女装のにあう男の娘の渚きゅんが女タラシにっ!
本篇に関してはケチをつける要素が見あたりません。自分の力を過信して調子にのったE組の生徒たちが保育施設を経営する老人にケガをさせてしまったため、退院の日までE組全員が連帯責任でタダ働きをすることになり、これまでにつちかってきた実力を発揮するというものでした。起承転結はしっかりしているし、小ネタもいろいろはさまれているしで、うまい。ほんとうにうまい。
だからこそおしまれます、殺せんせーが来年の三月に地球を爆破するのでそれまでに殺せんせーを暗殺しなければならない、という設定が。この大目的からはずれたE組の活躍すべてが茶番に見えてしまいます。
この漫画のことはキライではぜんぜんないし、ほめるところは山ほどあるし、単行本の売行きが好調なのも当然だと思っているのですが、ものがたりの根幹そのものが問題だと思えてしまうので、最近レビューしづらくなりました。
・『卓上のアゲハ』
そういえば岩代先生の『PSYЯEN –サイレン-』の主人公の名前アゲハっていいましたね。これが第一印象でした。
中身は卓球漫画。出てきた技は前陣速攻とかカット戦法とかゼロバウンドとか、『P2! -let's Play Pingpong!-』を彷彿とさせるものでした。パクリとまでは言わないけれど、亜流とか二番煎じとかいう感じが否めません。しかしこうしてみると、『P2!』が卓球漫画としてしっかりしていたんですね。俺にとってはアキラたんに萌えるのが主の漫画でしたが。とにかくこの漫画がもし連載になっても、このままでは『P2!』を超えられんでしょう。『ぷーやん』は超えられると思いますが
さて卓球漫画としては未だしの感があるものの、そのかわりといってはなんですがキャラはよかった。主人公は気持いいまでの卓球バカで、思春期まっさかりの劣情をおさえようとしておさえきれずに鼻の穴からふきださせるタイプです。敵役も不自然な暴言や悪行はやらないので悪い印象はあまりありません。
そしてヒロイン。学校一のアイドルで、当人もそのことを十分に自覚してブリっ子し、ひょんなことから主人公にこだわるようになった結果しだいにひかれてゆく、というキャラです。悪くはありません。しかし残念ながらすべてにおいて照橋さんの下位互換なのですよ。
でもジャージ姿はよかった。この漫画の作者、卓球漫画よりもラブコメのほうがむいているのではないでしょうか。
・『斉木楠雄のψ難』
斉木の兄、空助が両親と再会しました。やっぱり父親のほうはこんなあつかいです。世界のすべてが斉木パパをいじるために動いているように見える……
人並はずれた天才児として生れたのに、ふたつ年下の弟は文字どおり人間を超越した超能力者だったため、嫉妬やら劣等感やら嫌悪やらをいだくようになり、しだいに斉木兄弟の仲はわるくなっていったのでした。
しかし斉木よ、悪感情を腹のそこにおさめて表にださないだけマシだよ。感情は当人にもどうしようもない部分があるし。
・『黒子のバスケ』
名門のあととり息子として生れた赤司は厳格な父親によって英才教育がほどこされ、大人でも音をあげるほどの量をすべてこなしてゆくうちに、自分とはちがうもうひとりの自分がいるような感覚をおぼえるようになりました。まるで森鷗外ですな。
鷗外は津和野藩の藩医のあとつぎとして生れました。そのあとすぐの明治維新と廃藩置県とをきっかけに父とともに上京し、満十三歳で東京医学校(いまの東大医学部)にすすみました。実年齢だと規則でハネられるのでふたつサバをよんでの入学です。もちろん東大最年少入学のレコードで、このさきずっとやぶられることはないでしょう。そののちもエリートコースをあゆみ、最終的には軍医総監という日本でいちばんエライ医者になりました。おまけに家庭人としても模範的でした。鷗外の親族による思い出の記はたくさんありますが、これがすべて鷗外のことを手放しでほめております。公人としても私人としても完璧だったんですな。
その鷗外は自分のことを「役者が舞台で役をつとめている」ようなものだと感じていたらしい。「妄想」という小篇にこんなくだりがあります。
生れてから今日まで、自分は何をしてゐるか。始終何物かに策うたれ駆られてゐるやうに学問といふことに齷齪してゐる。これは自分に或る働きが出来るやうに、自分を為上げるのだと思つてゐる。其目的は幾分か達せられるかも知れない。併し自分のしてゐる事は、役者が舞台へ出て或る役を勤めてゐるに過ぎないやうに感ぜられる。その勤めてゐる役の背後に、別に何物かが存在してゐなくてはならないやうに感ぜられる。策うたれ駆られてばかりゐる為めに、その何物かが醒覚する暇がないやうに感ぜられる。勉強する子供から、勉強する学校生徒、勉強する官吏、勉強する留学生といふのが、皆その役である。赤く黒く塗られてゐる顔をいつか洗つて、一寸舞台から降りて、静かに自分といふものを考へて見たい、背後の何物かの面目を覗いて見たいと思ひ思ひしながら、舞台監督の鞭を背中に受けて、役から役を勤め続けてゐる。此役が即ち生だとは考へられない。背後にある或る物が真の生ではあるまいかと思はれる。併しその或る物は目を醒まさう醒まさうと思ひながら、又してはうとうとして眠つてしまふ。此頃折々切実に感ずる故郷の恋しさなんぞも、浮草が波に揺られて遠い処へ行つて浮いてゐるのに、どうかするとその揺れるのが根に響くやうな感じであるが、これは舞台でしてゐる役の感じではない。併しそんな感じは、一寸頭を挙げるかと思ふと、直ぐに引つ込んでしまふ。
まわりの期待に完璧にこたえられる人は、「背後にある或る物」を感じつづける人生をおくるものなのかもしれません。
なお鷗外がまわりの期待とはかかわりなく趣味ではじめたのが文学で、これがまた一流のなかの一流でした。赤司にとってのバスケみたいなものです。
・『食戟のソーマ』
ないわー。これはないわー。これまでコワモテのわりに好感度のあがるようなことをしてきた美作が、いまになってタクミの弟のことを侮辱したうえに調理器具にガムをはきすてました。相手をおこらせることで本気をださせようという魂胆なのかもしれませんが、そのために相手の肉親をあしざまに言うというのはないわー。クズの所業だわー。
ウーブをおこらせることで本気をださせようと、ウーブの両親をあしざまに言う悟空。クズロットの伝説がまた一ページ。
・『火ノ丸相撲』
ガチムチ萌えのショタコン……なんという冥府魔道をゆく女……! 冒頭で顔が見きれて登場したユーマ妹も読切りではゲスインだったし、なぜこの漫画は女キャラだけニッチ方向でせめるのか。いや題材が相撲なのもニッチか。
ライバルキャラとかかませ犬とかのオーラは白かったのに主人公のは禍々しいまでにドス黒いものでした。もちろん性格の反映とかではぜんぜんなくて、一度は天下をとりながらもそののち辛酸をなめた努力と執念とのあらわれです。
ちなみに俺がオーラ描写で印象にのこったのは『黒子のバスケ』の緑間です。バスケ選手の力量をオーラというかたちで見ることのできるアレックスがかませ犬のオーラをなかなかのものだと評したあと、つぎのページの緑間の天井にまでたちのぼる圧倒的なオーラの量にゲラゲラ笑ってしまいました。うん、キセキとその他大勢とではこれくらいの差はあるよねって感じでした。
……このオーラ描写がきっかけで、この漫画が相撲漫画からヌモウ漫画になることはありませんよね……?
・『BLEACH』
おまえはなにをやっているんだ一護。剣八のピンチをすくいにカッコよくあらわれたと思ったら、実力をだすそぶりをまったくみせずにアバズレ四人娘をひとりもたおせず、それどころか度しがたいまでの利敵行為をやってしまいました。おまけに剣八そのほかをほったらかしにしてユーハバッハめざして霊王宮へとんぼ返り。おまえホントに主人公かよ。
一護をたすけにヤムチャのむれがやってきました。ただひとりマシな白哉もエスノトとの一戦でだいぶ格をさげたしなあ。ええい、京楽と浮竹はまだか。
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- [2014/06/29 00:02]
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コメント
>すべてにおいて照橋さんの下位互換
俺が言いたかったのはこれだけ
浮竹はワンダーワイスにあっさり負けたし
京楽は陛下の国最初の侵攻で銃持ったメガネ爺に片目潰されたりしたしなあ
まあ京楽の方は爺さん完聖体ぽかったけど
あとソーマについては美作のキャラ作り失敗した
BLEACHはつっこみどころ多すぎて追いつかないレベル
鰤ちゃんは
「あぁ、終わりが近いんだな」って
なんとなく悲しくなりかけましたわ
やちるの霊圧が消えたな
美作君はあの唐揚げ屋(名前忘れた)の元締めが
創真を潰すために寄越した刺客だったはずなので
元々悪役ポジションですよ
だから寧ろ今までが好感度稼ぎ過ぎてただけであって
ここで悪役方向にハンドル切り直すのは立ち位置的に
そう悪くないのでは?
鰤、また半ページ使って手だけ描くという荒業をやってましたね、マネデキナイワー
陛下にミスターサタンかスーパースターの魂が乗り移りでもしたんかと。
>……このオーラ描写がきっかけで、この漫画が相撲漫画からヌモウ漫画になることはありませんよね……?
オーラといえば、無印テニヌ終盤ではオーラを手に集中させて返球力強化したり、足に移動させて脚力強化をしたりしてましたね。
当時は「ハンタの念能力かw」と思いましたが、最近の新テニヌはスタンドバトルを行っており、もはや他の能力バトル漫画の世界でも充分通用しそうなレベルになってます。
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