シグルイ 第39景「土壇場」
- シグルイ
- | トラックバック(0)
- | コメント(0)
伊良子の上段は野次馬の町民や牛股師範たちにしわぶき一つ起こさせない威厳を備えていました。下段を神髄とする伊良子ですが、それは秘剣流れ星の神速に対抗するために盲目になってから編み出した、いわば新技。二年を費やして修めた虎眼流や、それ以前の剣術修行はいまだ錆付いてはいません。なにせ伊良子は虎眼先生に仕置きされる前でさえ牛股師範を圧倒する実力者なのです。藤木びいきの孕石備前守も冷や汗を流しながら伊良子の腕を認めざるを得ません。
息子の雪千代も相槌を打ちつつ、伊良子を首斬り役人に、藤木を科人に譬えます。が、備前守はさすがに年の功か伊良子ばかりに注目してはおらず、藤木の顔をよく見るように諭します。藤木はいつものように一点の曇りも無い無我の境地に達していました。
それについての雪千代の評。
ホモ臭いとは思っていたが、やっぱり両刀か? 両刀なのか?
血と臓物にまみれた残酷無惨劇に一時の笑いをもたらしてくれる雪千代君はやはり逸材だという思いを再確認している暇もあればこそ。
真向唐竹割り!
藤木源之助が斬られた!
そう見えたのはいずれも剣の熟練者のみで町民たちはただぽかんと口を開けて見ていた!
実は伊良子は殺気を飛ばしただけでした。しかし読んでいる身としては錯覚と解らないものだから蛇平四郎みたいなリアクションをしてしまいました。
これだからシグルイはうっかり読んでいられない。そして読むのを止められない。
このデモンストレーションは伊良子の挑発でした。牛股師範も苦り切った表情で伊良子を睨みます。伊良子は心で藤木を貝殻野郎呼ばわりし、岩本家を粉と砕いてくれると口に出さすに宣言します。あの時フラれたのがよっぽどショックだったのでしょう。伊良子の魅力はなによりもまずそのヘタレっぷりにあると信じて疑わない俺ですが、やっぱり間違ってはいなかったと確信してしまいました。
それに対して藤木の魅力は静かな狂気。伊良子の憎悪に気付いたかのように小さく頷きながら寸毫も顔色を変えません。そして刀をかつぎ、虎眼流の必勝型をとります。それを見て頓狂な声を上げたのは、虎眼先生との立会いで下顎を飛ばされた舟木一伝斎でした。それだけならまだしも、虎眼流の跡目争いのためだけに息子のぬふぅ兄弟を斬殺されています。虎眼流の一方的な被害者としてはシグルイ世界の代表選手でしょう。
脳軟化現象がここまで進行していなかった時期、“虎眼流が太刀をかついだら用心せい”と数馬にアドバイスをしたのは彼でした。この日の虎眼流はかつぐにとどまらなかった。右腕に合わせて上半身を捻り、相手に背を向ける形になった。
話は変わりますが、『覚悟のススメ』にトルネード螺旋とかありましたよね。笑っていいものか真剣に悩んだものです。しかし散サマは視線を覚悟に向けていましたが藤木はあらぬ方向を見据えていた、と見せかけて実は刀身に映った伊良子をしっかり観察していました。
虎眼流“紐鏡”
紐は氷面(ひもである)
地味にセコいな虎眼流。
ペルセウスが水鏡の盾を見ていたのはメドゥーサに石化させられないためでしたが、藤木の狙いは伊良子の焦りを募らせるためでした。盲目の伊良子は紐鏡の奇怪な構えに惑わされずに左半身に殺気を感じていましたが、町民たちの戸惑いのざわめきこそが辛い。
そして仕掛けたのは藤木でした。町民を叱責する役人の怒声と同時に、逆回転の地摺り足払い!
飛猿横流れ
原作だとここであっさり右腕を斬り飛ばされる藤木ですが、シグルイ世界では一味も二味もというか原作そっちのけで暴走気味の強さを誇っています。伊良子に出来たのは防御だけでした。
“片手念仏鎬受け”!
牛股師範も思わず唸る見事な応手でしたが、藤木の豪腕の前には死期が少し延びただけでした。藤木は左手を添え、腕力だけで伊良子の体勢を崩す! 伊良子は為すすべもなく押し倒され、首筋には刃が当てられた。
この構図は藤木の師範代時代にもありました。
かつて藤木は伊良子の指溺みに敗れましたが、この状況に至っては鍔迫り合いに持ち込む猶予もありません。
まさに藤木の圧倒的優位で勝負は進んでいます。伊良子が逆転できるのは周知の事実ですが、どんなどんでん返しでこの窮地を脱するのでしょうか。
| シグルイ 7 (7) | |
![]() | 南條 範夫 山口 貴由 秋田書店 2006-10-20 売り上げランキング : 44 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
- [2006/10/24 23:40]
- シグルイ |
- トラックバック(0) |
- コメント(0)
- この記事のURL |
- TOP ▲
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://samuraimoon.blog67.fc2.com/tb.php/188-ed148421
- | HOME |






コメントの投稿