皇国の守護者 第26話
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四方を圧倒的多数の敵に包囲されながらなお新城は任務を遂行する。新城は諦めという概念を理解しない。運命とは自分のあたうる限りの行動と智嚢を絞りつくしてなお打開できないときに不満を抱きながらしぶしぶ受け入れるものだと信じている。
東側に二斉射を命じ、次に南側に対応。銃剣を着装させ、斉射の後に踏み込んできた敵兵を突き上げるように刺殺していく。正面の敵は撤退したが、東から縦隊が突入。装填の暇はないと判断し、新城は白兵戦に持ち込む。
新城は最悪の状況でなお最善の行動を積み重ねてゆく。しかし兵力は確実に目減りしていく。そして帝国軍はこの地で確実に新城の部隊を磨り潰すと決めている。新城は自らの命を道具にして一人でも多くの部下を救おうと心に決める。
「曹長、君は参加するな。
とりまとめ役が必要だ。もう一合戦済んだならば負傷者を率いてただちに降伏しろ」
交戦を命じられたのは新城であり、彼が死ねば命令は中に浮く。下士官である猪口はその場の状況から降伏を判断する。そういう筋書きか。
「でも、あなただけ死のうってのは虫が良すぎやしませんか大隊長殿?」
「何を言ってるんだ。
指揮官にはそれなりの特権がある。曹長はそいつの尻拭いが商売だろう。
しかし、まあ。勝手に死ねと言わないでくれてありがとう」
新城と猪口の絆は強く、絶望の極みにありながら軽口を叩き合える。そして漆原も参加した。絶え間ない戦闘の果てに彼の天然の愛嬌は意図的な諧謔味に進化した。漆原が完全に立ち直ったことを知り、喪失するだけの戦場で新城はちょっとしたものを得たと感じられた。そして再び喪った。帝国軍の斉射に漆原は脳漿を撒き散らした。
ついに新城は全滅を覚悟する。しかし夕焼けを見て違和感を抱き、我に返って懐中時計を確認する。新城は捕虜のバルクホルンに近寄る。自分を殺すつもりかとバルクホルンは訊ねたが新城は否定する。
「この言葉は軍事的偽善だが「貴官の勇戦に敬意を表す」。出血がひどいな」
「手荒く運ばれたのでね。貴官が私を殺すつもりだと考えた」
もはや新城にはバルクホルンの諧謔に付き合えるほどの気力すらない。療兵を呼んで手当てを命じる。
現在時は二月二十四日午後第四刻過ぎ。新城に課せられた刻限である。
新城とその部下の任務は完了した。北領の雪原を同胞と敵兵の血で染めて、自らは侵略者の膝下に頭を垂れて。
- [2006/08/22 17:00]
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