保険 アリコ Moon of Samurai Wizardryのごとく!

Wizardryのごとく! 第十八話(最終回) 

「待ちに待った時が来たのだ!」
「多くのマーフィー君が無駄死にでなかったことの証のために!」
「再び三千院の理想を掲げるために!」
「シナリオクリア成就のために!」
「ワードナよ、私は還ってきた!」
「なにガトー少佐の名ゼリフを二人で使いまわしているんですかあなた方は」
「いえ、その場のノリってやつですよ」
「ぶっつけ本番の割には息がピッタリよね」
「ふふん、当然だ。私とハヤテの相性は最高なのだからな!
 ……。
 …………。
 ………………」

「自分で言っておいて自分で照れないでください」
「う、うむ。それでは気を取り直して。
 いざ推参!」


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「あ、今度はこっちが先制攻撃だよ」
「当然だ。この状況を作り出すまでずっとMALORで仕切りなおし続けていたのだ」
「セコいというか、なんというか……」
「万全の体勢を整えるためには努力を惜しまない、とでも表現してくれ。さておき、前衛の三人はワードナを集中攻撃するように」
「ナギ。私は……?」
「ふむ。先制攻撃だと魔法は使えないのだったな。よし、伊澄はVAMPIREの群れをDISPELLしてくれ」
「魔法を無効化させるんですか?」
「言葉の意味は同じだが、効果は違う。これは僧侶と司祭、君主に可能な特殊攻撃で、負の生命エネルギーで動いているアンデッドの活動を停止させるものだ。要は聖職者による御祓いだな。よほどレベルに差がないと成功は覚束ないが、それでも何もしないよりはずっとマシだ」
「で? いつものように何もすることのない私はキタキタ踊りでも踊っていればいいのかな?」
「泣いても笑ってもラストバトルだ。猫の手でも借りるつもりだぞ。ハムスターはボルタックで購入しておいたRING of RIGIDITYを取り出してくれ」
「何コレ?」
「魔法の心得のない職業でも2レベルの僧侶魔法MANIFOが唱えられるアイテムだ。KATINOと同じく敵1グループを動けなくさせる魔法だが、こちらはアンデッドにも効果がある。伊澄と同じようにVAMPIREどもに使ってくれ」
「これで残るはナギだけですね。あなたはどんな攻撃をするんですか?」
「……、……!」
「……あのー、まさか自分のことはすっかり忘れていたとか?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「ザムディン!」
「忘れてたんですね」
「ううううううるさい!」
「さ、さあ皆さん! 泣いても笑ってもラストバトルなんだから頑張りましょう!」
「確かにハヤテ君の言う通りよね。っと!」

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「あれ? もしかして一撃で倒しちゃったんですか?」
「うむ。たとえラスボスといえどもクリティカルヒットからは逃れられない」
「なんて大味なゲームバランス……」
「魔界塔士Sa・Gaを彷彿とさせますね」
「かみはバラバラになった!」
「私、チェーンソーなんて使ってないって」
「私のDISPELLは失敗……」
「紅雷浄化(ジー・ベイル)を使えば一発だったのに」
「アルハイムじゃないんですから」
「さ、第二ラウンドね」

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「わ、いかにも闇の貴族ってイメージ」
「VAMPIRE LORD――その美麗なグラフィックと『隣り合わせの灰と青春』のワードナへの忠誠心から人気の高い敵キャラだ。が、魔法に対する抵抗力が無いから魔法使いと僧侶の最強攻撃魔法をぶつければ一ターンで倒せる。正直ザコに毛が生えたようなものだ。前衛は標的をVAMPIREに変更。ハムスターはそのまま。伊澄はMALIKTO、私はTILTOWAITだ」

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「二ターンで倒せちゃいました」
「最近のRPGでは考えられないくらいスピーディーね」
「気を抜くなよ。城に帰るまでが冒険だ」
「遠足じゃないんですから」
「ワードナの玄室には城へのワープポイントは無い。しかしAMULET――ワードナの魔除けにはMALORの魔法が封じ込められているから問題ない」

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「これでクリア。めでたしめでたしね」
「ほとんど台詞がありませんでした……」
「ネタキャラ化に一層の磨きがかかりました……」
「ところでお嬢さま、階級章って何ですか?」
「ワードナを倒したキャラに与えられるシルシだ。絶対に外すことはできないし、これが付いていると二度とワードナと戦えない。正直、まるでうれしくないプレゼントだな。ちなみに名前の右隣に>が付く。こんなふうに」

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「私の名前、最後までハムスターのままだったー!」


 とっぴんぱらりのぷう。





Wizardryのごとく! 第十七話 

「マーフィー君たちの尊い犠牲(ただし一方的)のおかげでマリアさんとヒナギクさんのレベルも最下層に潜れるくらいには上がりました」
「その後も経験値稼ぎに勤しんだおかげで二人とも再びマスターレベルに戻った。
 さて、そろそろだな」

「何がですか?」
「私たちの電脳世界での冒険が、だ。レベルは充分、アイテムも万全、前衛にはマスターレベルのエリートクラスが二人。ここまでくれば、負ける道理が見当たらない」
「確かに。作者は現在の私たちよりも貧弱なパーティーでクリアしたことも何回かありますからね」
「うむ。というわけで最下層の六フロアのモンスターどもを蹴散らし、ついに私たちはワードナの玄室にたどり着いた」

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「営業時間って……」
「アメリカ人のセンスにいちいち突っ込んでいたらキリがないから放置するぞ」
「いざ突貫!!」

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「ハワワワ! 相手の先制攻撃!?」
「なんの! ここまで来たんだから、一ターンくらい攻撃できなくても僕たちは耐え抜いて……」
「さてそれでは帰り支度を始めるか」
「おおっと!!」
「えーとナギ? それはさすがに弱気すぎない?」
「それで今までさんざん失敗したではないか。私にだって学習能力はあるぞ」
「その代わり運動神経は絶望的なまでに皆無ですけどね」
「shut up!」
「わ、ネイティブみたいにきれいな巻き舌」
「そんなことはこの際どうでもいい!」

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「レベルを下げられたって……何のレベルですか?」
「キャラクターのレベルに決まっているだろう。この特殊攻撃はエナジードレインといい、主に高レベルのアンデッドが使用してくる。効果はさっき言ったようにレベルが下がる。さらに最大HPも減少し、運が悪いと年齢が上がることもある」
「いくらなんでもひどすぎるって!!」
「全くの同感だ。ある意味、一撃死よりもタチが悪いからな。さすがに極悪すぎて最近のゲームではお目にかかれないだろう。作者がプレイしたRPGでレベルが下がる特殊攻撃が存在するのはロードス島戦記(PCエンジン版)くらいか。しかもこっちは神殿で治療費を支払えば元に戻るから厳密な意味では違うのだろう。女神転生にはあると聞いたが、これ以上は脱線するから止めておく」

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「さすがにラスボス、多彩な特殊攻撃を仕掛けてきますね」
「これでも被害は少ないほうだぞ。ワードナの打撃には毒・麻痺・石化・クリティカルヒット・4レベル相当のエナジードレインが秘められている。ぶっちゃけブレス以外の全ての特殊攻撃を繰り出してくるわけだ。おまけに使用してくる魔法のレベルは当然のように最高の7だ」
「なんだかほとんどイジメのような気がしてきました」
「一ターンでパーティーが半壊してしまいましたね」
「だから帰り支度をすると言ったのだ。さ、戦線を離脱するぞ」
「で、でもイベント戦闘では逃げられないはずじゃ……」
「普通の手段ではな。しかしマスターメイジである私がパーティーにいれば全く問題はない」

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「MALOR……?」
「空間転移魔法、くだいて言えばテレポートだ。戦闘中に唱えれば確実に逃げられる。跳ぶ先は一階下のランダム座標だが、地下十階だと繰り上がる計算なのか地下一階になる。なおキャンプ中だと自分で座標を決められる」
「ルーラとリレミトの複合変形魔法ってところですか」
「汎用性はこちらの方がよっぽど高いぞ。しかしそれだけに初心者にはお勧めできない。もし座標先が迷宮の外やブロックだとしたら一発でパーティーが全滅してしまうのだ」
「ルーラやリレミトは転移先が指定されている分あつかいやすいし素人から玄人まで幅広く使われているテレポートの基本魔法。対してMALORは見た目なんかはルーラやリレミトとほとんど変わらねぇがあえて座標を指定できる分汎用性をかなり増加させて移動するより障害を突破することを目的とした玄人好みのあつかいにくすぎるテレポート魔法。使いこなせねぇと旅客機より不便なただの有人ロケット特攻機みてぇなもんだってのに何であのガキは?」
「某所で大人気の『斬』コピペですか」
「でも、ひとまず助かったけどまた経験値を稼がなくちゃいけないのよね」
「いや、その必要はない。というのも、エナジードレインで経験値が減るのは戦闘が終了してからなのだ。つまりMALORを使えばレベルは下がっても経験値は据え置き。宿屋に泊まればレベルは元通りになるという寸法だ。理由? 仕様としか答えようがない。システムの裏をかく技だからあまり好みではないのだが、そうも言ってられんだろう」
「ワードナ討伐は次回に持ち越しですね」





Wizardryのごとく! 第十六話 

「結局、聖なる鎧と村正を有効活用するためにヒナギクさんとマリアさんに転職してもらうことにしました」

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「あれ? 年齢が22歳だけど、計算が違うんじゃない?」
「いえ。前回も言及したように、私たちは何回か死にましたからね。Wizardryだと生き返らせたときに年齢が上がる場合もあるんです」
「何だかちょっと損した気分ね。……って、どうしたのハヤテ君?」
(……ぽ~っ)
「あらあら~、どうしたのかな~? 二十代に成長して大人の色気を身にまとった私にメロメロになっちゃったのかしら?」
「ごふっ!!」
「ふふ~ん、私のことなんて意識してなかったんじゃないのかな~?」
「あ、いえ、その、ですね。元々ヒナギクさんは性別を超えた意味でかっこいいし綺麗だから僕もそれほど意識せずに済んだんですけど今は女性の丸みと年上の余裕を兼ね備えているから見る目も違って来てしまうって僕は何を口走っているんですか!」
「そ、そんなふうに言われると、……こっちまで照れちゃうじゃない……」
「オフェンシブツンは諸刃の剣。カウンターによるダメージは三倍付け(当社比)です。もちろん心はデレなので、今回のように切り替えされると確実に甘々な雰囲気が周囲に漂うことになるのです」
「(ハッ! 確かにハヤテ君は大人っぽい女性に弱い!)こうなったら私もパーティーのために転職しようかな!」
「いえ西沢さん、盗賊は代わりが効かないからそのままでいてください」
「はうう!」
「もしもし、ハヤテ君。私を見て何か感想はありませんか?」

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「えーっと……お嬢さまが帰ってこないうちにちゃんと転職していたほうがいいですよマリアさん」
「あなたの目は節穴ですかっ! ちゃんと年齢が21歳になっているでしょう!」
「あ、ホントだ。すいませんマリアさん、あまりにも外見が変わらなかったもので、つい」
「ついじゃありません、ついじゃ!」
「やっぱり数字の上では変化があっても、実際は実年齢に近づいただけだから本質的には何も変わらないってことなんでしょうか」
「はぐぁっ!」
「ただいま~。っと、マリアとハムスターはなぜ落ち込んでいるのだ?」
「それが僕にもさっぱり……」
「ハヤテ君の鈍感さは犯罪ですっ!」

「転職したてのマリアとヒナギクはどちらもレベル1だから、経験値稼ぎにコンビを組ませてマーフィーズゴーストと戦わせることにした」
「え? でもレベル1の侍でもワードナは倒せるんじゃないですか」
「いやそれ『隣り合わせの灰と青春』の読みすぎだ」
「Wizardryの、というよりもゲームノベライズの伝説的作品はさておき。二人だとやっぱり不安じゃないでしょうか」
「なに。二人とも武装度は同じだし、どちらも三種の神器を装備しているからな。正直、地下一階ではどうやったら全滅できるか想像もつかん」
「でも村正って、海外でも有名なんですね」
「ああ。たまに綴りを間違ってMURASAMA BLADEなどと書かれてしまうがな。やっぱりアメリカ人に日本語の発音は理解しにくいらしい。あちらのRPGでは忍者もけっこう活躍しているが、肝心の手裏剣がSHURIKINとかSHURIKENTAとか笑わせてくれるアイテムに変貌していることもある」
「そのへんは日本人も、和製英語とかがあるから偉そうなことは言えないけどね」
「でも村正って、なんで妖刀として知られているんでしょうか」
「徳川家に仇なす刀だからさ。徳川家康の祖父の清康と父の広忠はどちらも家臣によって斬り殺されたが、そのときに使用されたのが村正だった。家康の長男の信康が謀反の疑いで切腹させられることになったが、このとき介錯に使われた刀もまた村正だった。家康本人も村正に傷付けられたことがある。後に三男の秀忠が小刀で爪を切っていたとき、謝って指を怪我したことがある。それを聞いた家康は“その小刀も村正じゃないのか”と冗談を飛ばしたが、調べてみると本当に村正だった。さすがの東照大権現も薄気味が悪くなり、村正は公にも忌避されるようになったというわけだ」
「なるほど……さすがお嬢さま、博識ですね」
「はっはっは、いやなに。メインヒロインとして当然のことをしたまでだ」
「ちょっと日本語がヘンじゃないかな」
「さて妖刀として忌み嫌われることになった村正だが、捨てる神あれば拾う神あり。徳川幕府に転覆させようと企む反体制の闘士、具体的に言えば真田幸村や由井正雪、幕末の勤皇志士たちは好んで村正を佩いたのだ」
「ははあ」
「さて知名度としてはトップクラスの村正だが、日本刀の番付から言えばそれほどランクの高い刀ではなかったりする。と言うのも村正は数代(三代説と七代説がある)に渡って伊勢桑名で刀を鍛えた刀匠であり、言ってみれば村正の刀はブランド品だからだ。たまに正宗と並び称されたりもするが、はっきり言って格が違う。なにせ正宗の代表作は大抵が国宝か御物だ。なお村正が正宗に師事したという俗説があるが、もちろん嘘だ。五郎入道正宗は鎌倉末期に活躍した刀匠で、文亀元年に初めて銘が確認される初代村正とは200年近い開きがあるからな」





Wizardryのごとく! 第十五話 

「早いものでこの連載ももう十五話か」
「そうね。作者は最初の頃は毎日更新のつもりだと吹いていたのに」
「すぐに更新が週一になってしまいましたね」
「私の実感としては長く続いている方だ。最悪の場合、最下層に到達する前に全滅するのではないかとさえ思っていた。作者はこれまで二・三十回はこのゲームをプレイしているが、リセット技を禁止すると大抵そのあたりでレギュラーメンバーが全滅してしまうからな」
「ちなみに作者の最初の全滅は地下三階、落とし穴の罠に掛かりまくっての無念のリタイア。リセット技もマッピングも知らなかった幼き日のことでした」
「今回のリプレイでも、書いては来なかったがキャラも何度か死んでいたりする。ま、ファミコン版はゲームバランスがかなり改良されているからここまで来られたのだろう」
「ポイゾンジャイアントにMAKANITOが通用するのは大きいわよね」
「テレポーターの罠の解除に失敗して石の中に実体化しても死亡扱いで、しかも遺体が城まで運ばれるというのも助かりますし」
「ああ。ま、あくまでもアップルⅡ版やリルガミンサーガと比較しての話であって最近のパック旅行じみた親切極まりないヌルゲーに較べれば反則的な難易度を誇ってはいるがな。
 ……ん? ヒナギク、ちょっとパーティー欄を見てみろ」


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「あ、最大HPの左にプラス記号がついているわね。そう言えば前回はハヤテ君に……」
「ふむ。で、未鑑定のアイテムにRINGはあるか?」
「……ううん、ARMORだけだけど。それが何か?」
「なるほど、二つ目の三種の神器が手に入ったわけか。
 よし。今回はこのへんで帰還するか」


「……はい。確かに三種の神器の一つ、ARMOR OF LORDS――聖なる鎧です」
「すごいですねお嬢さま、でもどうして鑑定していないのに判ったんですか?」
「単純な消去法だ。まずヒーリングアイテム、つまり迷宮の一歩ごと戦闘の一ターンごとにHPを回復してくれるアイテムを所持しているキャラは最大HPの左にプラス記号がつく。そしてWizardryのシナリオ1にはヒーリングアイテムが三つしか存在しない。そのうちの一つは我々の最終目標、ラスボスのワードナを倒してしか手に入らないワードナの魔除けだから除外できる。で、残る二つはRING OF HEALINGとARMOR OF LORDSなのだが、前者の不確定名はRINGで後者はARMORなのだ。よってハヤテは聖なる鎧を持っていたことが判ったというわけだ」
「さすがナギ。人生の大半をアニメと漫画とゲームに費やしているだけあって、そういうムダ知識だけは必要以上にありますね~」
「うるさいうるさいうるさーい!」
「なんで灼眼のシャナ?」
「やっぱり貧乳のツンデレヒロインだからでしょ」
「その言葉そっくりそのまま返すぞヒナギク!」
「な! し! 失礼ね! ナギに較べれば胸囲はずっとあるわよ!」
「あのーヒナギクさん、胸囲とバストは計測方法が違うんですよ?」
「ふふん、断っておくが私はヒナギクより三つも年下、すなわち将来の自分に期待することがヒナギクよりも許されている立場なのだ!」
「ぐっ……! でも今のナギの身長から判断すれば過度の期待はかえって自分を傷つけるだけよ!」
「胸へ回るべき栄養を全部他の部分に持っていかれているヒナギクよりはマシだ!」
「ギギギ」
「ラララ」
「今度は『はだしのゲン』ごっこですか」
「あれ、“ラララ”じゃなくて“ううう”でしょうに」
「ところで『はだしのゲン』ごっこと言えばやっぱり『進め!! 聖学電脳研究部』を思い出しますよね」
「平野耕太先生の作品中でも『ヘルシング』の巻末漫画と同レベルのテンションで単行本一巻分を描き切った超マイナー暗黒作品を何で知ってるんですかハヤテ君は」
「お嬢さまの薫陶よろしきを得たおかげです」
「ちっともよろしくありません」
「……そういえばハヤテ君って、巨乳属性はないのかな?」
「なんです、それ?」
『ほっ』
「? どうしたんですかサキさんを除いた皆さん、一様に安堵の溜め息なんかついて」
「理解できなくて結構だ。とりあえず、この場でヒナギクと喧嘩する理由の九割は失われたな」
「べ、別に綾君のことなんか関係ないけど、ナギが矛を収めるっていうのなら私も文句はつけないわよ」
「……いろいろと言いたいことはあるが、まあいい。聖なる鎧の説明に移ろう。
 聖なる鎧はこのゲームで最高のACを誇る防具だ。前述したようにヒーリング効果も持ち合わせている。さらに特殊効果がすごい。竜・魔獣系からの攻撃緩和に加え、悪魔・獣人・アンデッドモンスターに対してはダメージが倍付けされる。おまけに本来なら忍者にしか不可能なはずの一撃死・クリティカルヒットさえ繰り出せる。
 この鎧を身に纏ったキャラは総合力においてパーティーに抜きん出た存在になれるだろう」

「でも、たぶん手裏剣みたいに装備できる職業に制約があるんでしょう」
「うむ。ARMOR OF LORDSの名称が示すとおり、この鎧はLORD――君主にしか装備することはできない。なお君主とは戦士と僧侶を併せたような職業で、善の戒律の者しか就くことができない」
「だったら僕たちは善のパーティーだから転職すればいいわけですね。でも、やっぱり転職するとキャラは弱くなるんですか?」
「その通りだ。具体的に説明すると、まずレベルが1に戻ってしまう。次に特性値――力とか生命力とかいったパラメータだが、これが種族の基本値にまで低下する。HPとMP、覚えた魔法は据え置きだがな。それに、なにより」
「なにより?」
「老ける。転職したら歳が一気に五つ増える。キャラの戦闘力にはほとんど影響がないとはいえ、キャラクターへの感情移入が半端ではないWizardryにおいてはかなり辛い」
「老ける……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「な! 何ですか皆さん! なぜいきなり私の方を向いて生暖かい視線を送ってくるんですか!」
「いやなに、マリアなら五つくらい歳が増えても実年齢にちょっとばかり近づくだけだから」
「実年齢って何ですか! しかも“ちょっとばかり近づくだけ”って、ナギの脳内では私は二十二歳を超えているんですか!?」
「何をいまさら」
「鼻であしらわれたっ!?」
「まあまあお嬢さま。マリアさんの戒律は中立じゃないですか」
「そ、そうですよ! 残念ながら私は君主には転職できません! ああ残念です残念です、せっかくパーティーに貢献できる機会でしたのに! 本当に残念ですこと!」
「心の底から白々しいセリフを力一杯並べ立てているな」
「あのー皆さん。お取り込み中すみませんが、今回の探索で見つかったアイテムに三種の神器がもう一つありました」

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「MURAMASA BLADE!」
「なんだかすごく驚いていますけど、そんなに凄い武器なんですか?」
「ああ。村正はまさしくWizardryにおける“約束された勝利の剣”だ。その威力は、まったく戦闘経験のない者が扱ってさえ一撃で巨人族を絶命せしめるほどに強力だ。具体的な数字を挙げると、戦士とロードにとって最強の武器カシナートの剣のダメージは10~12。それに対して村正のそれは10~50、実に三倍近い期待値だ。高レベルのキャラに装備させれば、一ターンで屠れない敵など存在しなくなる。が、それだけに入手できる確率は絶望的に低く、入手したときの達成感は筆舌に尽くしがたいほどに高い。それこそ作者は村正を見つけた時点でWizardryを止めた経験が何度もあるくらいだ。ワードナ討伐など、村正に較べればオマケのようなものだ」
「ははあ」
「もちろん今回はワードナを倒すまでプレイし続けるがな。あ、村正を装備できるのは魔法戦士の侍だけだ。ちなみに戒律は善と中立だからマリアに転職してもらおう」
「ええそうでしょうそうでしょうとも解っていましたとも想像はついていましたとも結局のところ私はオチ要員でしかないことなんて最初から因果律の定めの如く決定していましたとも実はほんのちょっとだけ正ヒロインとしての立場が尊重されるんじゃないかと淡い期待を抱いたこともありましたけど所詮は後で辛くなるのは自分なのだから止めておいたほうがいいのに諦めたらそこで試合終了ですよとの安西先生のお言葉を忘れられなくてこんな惨めな思いをしてしまうんですよ笑ってくださいよ皆さん哀れな道化を笑ってくださいよそしたら私まだ頑張れますから」
「マリアさんが壊れた!」
「事実とは往々にして残酷なものだ」
「はうっ!」
「さらにお嬢さまがトドメを刺した!」





Wizardryのごとく! 第十四話 

「おやサキさんこんにちは。また鑑定に失敗した武具の解呪ですか」
「はい……毎度のことで本当に申し訳ありません、ヒムロさん」
「いや気になさらずとも結構ですよ。これも僕の仕事ですし、なにより解呪料金がアイテム売却価格と同じというボッタクリ商売ですから」
「自分で言うかな、フツー」
「僕はお金が、大好きだからね」
「ソレ聞き飽きました」
「しかし、やはりサキさんは金食い虫だな」
「ううう……」
「まあまあお嬢さま。サキさんは一軍じゃないんだから、レベルが足りないのも仕方のないことでしょう」
「ふむ。ハヤテの言うことにも一理あるな。ではサキさんを一軍に昇格させるか」
「え? でも以前に、司祭は実戦には不向きとおっしゃいましたよね」
「別にレギュラーメンバーとして使い続けるわけじゃない。後衛に配置して最下層で経験値稼ぎをしようというだけだ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 私のHPは20しかないんですよ!」
「直接攻撃は受けないから大丈夫。しかしメンバーを一人外す必要があるな……うん、マリアは酒場で待機していてくれ。前衛にはハムスターが回るように」
「了解しました」
「わ、私は盗賊だけど大丈夫なのかな?」
「確かに盗賊は装備も限られているし、攻撃力も戦士に較べるべくもない。が、それでも魔法使いや僧侶よりかはまだマシだ。短剣までなら扱えるし、とりあえず壁の役目くらいは果たせる」
「はううう……」
「これは余談だが、Wizardryの変則パーティーとして戦士二人、盗賊一人、僧侶一人、魔法使い二人という編成がある。魔法使いが一人増えるわけだから、中レベル以上のパーティーなら正面打撃力が格段に上昇する。代償として防御力はやや劣るがな。
 まあいい。そんなわけでサキさんを連れて迷宮に潜るぞ」


「さて途中での障害をものともせず、私たち新パーティーは地下十階での最初の戦闘をこなした。さっそく宝箱の罠を外すとしよう。ハムスター、出番だぞ」
「あ、あのー三千院ちゃん? ちょ~っとパーティー欄を見てくれないかな?」
「それが一体どうしたと……」

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「ぶっ!」
「これは……さすがにマズいわね」
「なぜだ! 私たちは敵のLAHALITOを喰らっただけだぞ! しかも一回きりだ!」
「中規模火炎魔法LAHALITOのダメージは6~36でしょ? 期待値からして20を上回ってるじゃない」
「た、確かに。しかし、さすがに参ったな。このことがワタルに知れたら、私たち五人は鏖殺されるぞ」
「……オウサツ?」
「皆殺しって意味です」
「ハワワ!」
「ナギ……。僧侶魔法には死者を蘇生できるDIやKADORTOがあるけど……」
「……いや。伊澄のレベルに注文をつけているわけではないが、信頼性に疑問がある。ここはやはりカント寺院に依頼しよう」
「お金を節約するつもりが、結局は散財になってしまいましたね」
「うむ。この三千院ナギの目を以ってしても見抜けなかったな」
「見抜きなさいよ、それくらい」

「そなたがここにきたのもカミのおみちびき。わがきょうかいにどんなごようじゃな?」
「まるまるドラクエⅣからパクるな」
「シスター。今回の探索でサキさんが命を落としたので、蘇生を頼みたいんですが」
「……」
「あのー、シスター? 聞こえてますか? 藤田和日郎先生の悪役がよくやるあのモノスゴイ笑顔を浮かべられると見ているこちらの背筋が寒くなるからできれば止めて欲しいんですけど?」
「……やはり主は迷える子羊の願いを無碍にはなされませんでした。主は私の邪魔者を事故に見せかけて排除してくださったのです。毎日の起床時と正午と就寝時に加えて朝昼晩と三時のおやつの食前と食後に捧げた都合十一回の祈りが天に届いたのです」
「その努力をもうちょっと他の方面に注ぎましょうよシスター!」
「冗談です。私にとっては恋敵でも、彼にとっては大事な人。ここで見殺しにしたと聞けば、彼は決して私を許さないでしょう」
「なんかシリアス……」
「とにかく蘇生を始めます。寄付金はどなたが納めてくださるのですか?」
「あ、それだったら僕が……」

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「えーんえーん」
「泣くなハヤテ。萌えるじゃないか」
「そこで萌えてどうするのかな三千院ちゃん!?」
「やっぱりナギってSなのかしら」
「ゲフンゲフン! いやアレだ。料金が足りなかっただけでここまで罵倒するとは、聞きしに勝る強欲寺院だな」
「取って付けたような誤魔化し方ね」
「あの、私が支払っておきます」

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「ううう……ひどい目にあいました。やっぱり私はずっと若のお側を離れたくないです」
『……』
「え? え? え? どうしたんですか皆さん急に押し黙ってしまって?」
「いえ、天然という萌え属性の破壊力を改めて思い知らされただけですから」
「?」
「おお、神よ! やはり私はあの時、彼女を放置して亡き者とすべきだったのでしょうか!?」





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