保険 アリコ Moon of Samurai ハヤテのごとく!

『ハヤテのごとく!』最終回によせて 

 『ハヤテのごとく!』が終りました。十三年におよぶ長期連載、二千万部に達しようかという単行本発行部数、数知れぬほどのメディアミックス作品、と数字や結果だけならば堂々としたものだけれど、かんじんの中身はといえばわりあい早いうちから失速し、それとともに単行本の発行部数もころがりおちるように減ってゆき、最終章はあきらかな打切りというていたらくでした。俺も連載のなかばあたりからどんどん熱がさめてゆき、ここ数年は完全に惰性でレビューをつづけたものです。とはいえブログをはじめるまえからのつきあいではあるし、まえに総評を書くと予告したこともあるし、自分なりのけじめとして以下の駄文を書いてゆきます。



この漫画との出あい

 俺がはじめて『ハヤテのごとく!』を読んだときのことは、おぼえていません。初見では特に印象にのこらなかったのでしょう。読むきっかけもなんだったのか。おそらくネットで記事になったのをちょいちょい見かけて興味がわいて古本屋で立読みするようになったのが俺とこの漫画との長いつきあいのはじまりだったものと思われます。
 手にとって読んだ本をそのままレジにもっていった、というわけではありません。それは俺が『ハヤテのごとく!』の単行本を買ったのはビニールにつつまれて読めない古本屋でのことだったとおぼえているからです。単行本を四巻まで古本で買って自転車のかごにほうりこんで夕暮のなか家まで帰ったことはふしぎと記憶にのこっています。
 なおそのときの古本屋はいつのまにかつぶれていました。昨今は大手チェーンでもないかぎり古本屋にはきびしいご時世です。


ブログ開始とレビュー

 俺がこの漫画に惹かれた理由は、おおまかにいえばキャラとギャグとストーリーでした。ヒナギクをはじめとした魅力的なキャラ、実にマニアックで一般的なサンデー読者の九割には通じなさそうなパロディギャグ、そして基本的に一話完結でありながら世界の底にしっかりと流れてときたま表面にあらわれるひとすじのストーリー。はじめはざっと読みとばしていたのに、二度三度と読みかえすたびに発見があるというぐあいで、噛めば噛むほど味がでるスルメというか、なかなかにあなどれない漫画でした。
 そしてそのころ俺はヒマをもてあましていて、ネットでは漫画やアニメのレビューがずいぶん盛況だったので俺もひとつブログをはじめることにしました。それと同時に『ハヤテのごとく!』のレビューも開始。キャラの見せ場のシーンや笑えるやりとり、あれこれ考察したくなる説明のあるコマなどをキャプ画像にしてのレビューという形式にはもってこいの漫画でした。
 このころのレビューは熱量分量ともにあとあととはくらべものにならないほど充実していました。それはもちろん俺がこの漫画を無心に好きだったこと、漫画自体がおもしろかったことも大いにあずかって力がありました。


絶頂のあとは

 『ハヤテのごとく!』は連載から二年あまりでアニメ化を達成しました。深夜三十四時枠という時間帯のため、原作のニッチな作風がわりあい一般むけのマイルドなものになっていたおぼえがあります。この作品にいちばん勢いがあったのはアニメ第一期が放映されてしばらくのことでした。レビューサイトも活気があり、俺も『ハヤテのごとく!』を読んだり観たりレビューを書いたりするのはこのころがいちばんたのしかった。
 しかし満つれば虧くるが世の習い。それは『ハヤテのごとく!』も例外ではありませんでした。この漫画は一話完結のギャグパートと数話連続のシリアスパートとが交互になって話がすすむ作品なので、一話完結のほうばかりをやっていたらストーリーの進展がとどこおります。それがこの漫画では連載から数年でそういう中だるみが顕著に見えはじめました。俗にいう「カルピスを何倍にも薄める」現象です。
 それでもはじめのうちはそういう事実を見て見ぬふりというか、あまり気にしないことにしていました。俺は好き嫌いがはげしいうえに根がしつこいので、はじめに気にいらなかったりつまらないと感じたりしたものを好きになることや、その逆のパターンは少ないのです。よほどのことがないと逆転現象はおこりません。
 その「よほどのこと」が残念ながらおこってしまいました。


ハヤテってこんな男だったの?

 テンポの悪いストーリー、しょぼいアクション、意味不明な結末、そして女の腐ったような主人公。特に最後のハヤテのみっともなさについてはまえにも書いたので省くけれど、全体的にギリシャ篇そのものにダメなところが目だちました。この漫画がそれまでに徐々に劣化してきたことへの不満がここへきて爆発したのも大きい。くわえてアーたんのキャラが個人的にどストライクだったのもこのばあいは逆効果で、ほかの内容のひどさに拍車がかかって見えました。
 正直なところ、ギリシャ篇からは『ハヤテのごとく!』への熱意がだいぶうすれました。いっそのことレビューを書くのも漫画を読むこと自体もやめてやろうかと考えたことも一度や二度ではありません。それがなかなかふんぎりがつかずに何年もズルズルとつづけて結局最終回まで到達してしまったという感じです。


延々たる中だるみ

 ギリシャ篇がおわってすぐにルカの名前がでてきて、そこから同人誌篇へと突入……するまでが実は長かったし、突入してからはさらに長かった。引きのばしにつぐ引きのばし、カルピスを薄めすぎてカルキくささがただよいそうなシロモノでした。それ以降については言わぬが花です。作者が連載以前にあたためていた設定やキャラの導入とか、これまでの伏線の消化につとめていたことはわかるのだけれど、それが牛の歩みのように遅々としてすすまないので、すべてがおわった今になってふりかえってみてもあまり評価できません。


そして最終章

 かくして漫画のおもしろさはどんどん損われてゆき、単行本の売上も下降線をたどるばかりとなり、かててくわえて紙面の刷新やらなんやらで十年以上の長きにわたって連載のつづいてきた『ハヤテのごとく!』も打切りと相成りました。さすがにサンデー史上最長のラブコメ漫画を即座に切りすてるのは忍びなかったのか最終章と銘打って半年ほどの猶予があたえられた……と書いておいて何ですが『競女!!!!!!!!』はアニメが終ったら連載も終るようにと言われていて、アニメが終ってから最終回までがこれまた半年でした。サンデーではあるていど結果をのこした作品なら打切りまでに半年の猶予期間があたえられるようです。
 閑話休題。最終章「What A Wonderful World」の二十話で長かった『ハヤテのごとく!』も最終回をむかえました。ハヤテとナギの爆弾の処理とか、王族の庭城についての決着とか、ハヤテのクソッタレ両親の制裁とか、作品中もっとも重要と思われる案件はいちおう結末を見ました。もちろん未消化の伏線は山ほどあります。ツグミ・ルリの正体とか、ヒスイの傷とか、法仙夜空の正体とか、黒椿とか、38代目の写真とか。


総評

 『ハヤテのごとく!』は、残念な漫画でした。連載初期のテンションを最後まで維持できれば名作漫画の仲間入りも不可能ではなかったでしょう。しかしなまじ売れてしまって畑先生に気のゆるみが生じてしまったのか、どんどんスカみたいな漫画になりはててゆきました。まったく残念です。
 本来ならここでしめくくりのことばとして畑先生に対して感謝の辞をのべるのが人としての常識なのでしょう。しかし俺は非常識な人間なのです。そもそも俺の好きだった『ハヤテのごとく!』を台なしにしてくれた張本人が畑先生だという考えを捨てきれない以上おざなりの謝意なんぞをならべたてる気にはなれません。どちらかというと恨みごとをえんえんとならべたてたい気分です。われながら人としてどうかと思わざるをえません。
 しかしそれでも、畑先生おつかれさまでした。『アド アストラ ペル アスペラ』の連載が再会したらレビューも再会するかもしれません。




ハヤテのごとく! 最終話「この何よりも広い星空の下で、君に話したいことがあるんだ」 

 最終回のサブタイトルはいまどきのラノベを彷彿とさせる長たらしいものでした。もうちょっと短くてピシッとしたものが好みなのだけれど、これはこれで作風に適しているので悪くありません。

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 かずかずの未消化の伏線についてすこしでも説明しようと努力するのではなくハヤテのクズ両親の制裁に七ページかけました。だがそれがいい! 俺がこの漫画をここまで読みつづけてきた理由の最大のものがあのクソカスどもに天誅がくだるのをこの目でみとどけることだったので満足しきりです。ここだけは畑先生は期待を裏切らないでくれました。できれば七ページといわず七十ページかけて『ベルセルク』のグリフィスや『東京喰種』のカネキがうけた責め苦がかわいくみえるくらいに手ひどく痛めつけられてほしかったけれど、まあそういう漫画ではありませんから。
 あ、それとハヤテの父親が一瞬のためらいもみせずに女房をみすててひとりで逃げだし、かつぜんぜん悪びれずに命びろいしそうなところで安堵するというスーパーなクズっぷりにはあきれるのを通りこして感心しました。ホント最後の最後までクズだったなあ。
 そして月日はながれて桜舞いちる春。

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 ハヤテは行方不明、ナギは公立中学へと転校し、ハルさんは中退したそうです。ハルさんの学費滞納は家が焼けたうえに父親がハワイでモツ鍋屋をひらいたのが大コケしたせいでしょう。
 そしてヒナギクは作中時間で一年ごしの、リアル時間で十年ごしの思いを意中の相手にぶつけました。

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 行方不明のはずのハヤテをどうやって見つけたんだ。愛か。愛ゆえか。チクショウ。

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 二年後のナギはずいぶん成長しました。背もだいぶのびたし、胸もヒナギクみたいなペッタンコではなくなりました。おまけに家事も生活費もすべて自分でなんとかし、くわえて学校生活もちゃんとおくり、さらにハルさん相手に世話女房みたいなことまでやっていました。一日一時間睡眠で執事の仕事をパーフェクトにこなす高校生がいる世界だとはいえちょっと成長しすぎです。胸が
 ところでカユラが扉のむこうから顔を出したところを見るとオタ三人娘はおなじマンションにすんでいるようです。いっそのことルームシェアすればいいのに。
 そしてクリスマスイブ、例の公園でふたりは再会しました。

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 おめでとう! ハヤテは執事からストーカーに退化した!

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 ハヤテがナギを守りたいという思いは二年たってもかわりませんでした。めでたしめでたし。
 うわべだけを見たらハヤテとナギがくっついたかと思ってしまうところだけれど、実際にはハヤテがナギに抱いているのはやはり恋愛感情ではなく保護欲求のままなので、ハッピーエンドではあってもいわゆる両想いエンドではありません。とはいえふたりの関係がおたがいの誤解がとけただけのものにとどまるか、あるいはハヤテにとってナギが守るべき存在から恋愛対象にかわるかはだれにもわかりません。ふたりが手をとりあって歩いてゆくさきは、なにも描かれていないまっ白な未来なのですから。
 しかし告白シーンすらちゃんと描かれずに玉砕したヒナギクについて、同情するべきか喜ぶべきか、それが問題だ。

 というわけでとうとう終ってしまいました。最終回はヘタにベタベタすることなくすっきりと終ってくれて、十三年の長期連載のしめくくりとして満足のゆくものでした。
 『ハヤテのごとく!』そのものについての総評は後日書きます。



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ハヤテのごとく! 最終章 What A Wonderful World⑲「When you wish upon a star」 

 王族の庭城の崩潰にまきこまれてひとりさびしく圧死するかにみえたハヤテがわりかしアッサリこちらの世界にもどってきました。案の定こうなったかとは思ったけれどバックステージによれば畑先生はながいことハヤテが死をむかえるラストを構想していたそうなので実はハヤテがたすかるのはそう楽観視できることではなかったのでした。

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 ハヤテはナギのもとをさりました。
 そして次号は最終回。さてどうなることやら。




ハヤテのごとく! 最終章 What A Wonderful World⑱「BEYOND THE TIME」 

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 ナギの夢のなかでマリアさんと再会したハヤテはまたしてもポロポロ涙をこぼします。ホントに女々しいやっちゃな……なおマリアさんは王玉がつくりだしたニセモノのはずなのにすべてを見とおしたかのような態度でハヤテをはげましました。
 そしてハヤテはやっとのことで自分の望みどおりの世界にひきこもるナギを見つけだします。こういうばあいニセモノの自分と相対峙してバトルに発展するというのがベタな展開なのにニセハヤテは登場せずじまいでした。そんなことをやってるページ数がないのでしょう。
 で、ハヤテは最後の最後に男を見せてナギの願いをなかったことにし、王玉をナギにわたして自分はひとり崩潰する夢の世界にのこりました。最終章なんだからこういう男気をもうちょっと見せてほしかった。いやまあ死んではいないのでしょうが。



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ハヤテのごとく! 最終章 What A Wonderful World⑰「誰かが君を愛してる」 

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「私は反対です。
 遺跡をこわせば歴史はかわる。戦争は起きない。すべてチャラ。
 でも、大切なものもこわてしまうじゃないですか。
 わたしの大切なもの――このナデシコでの一年間あまりの生活。その思い出が私のすべてです。あたえられた記憶でなく、自分で勝ちとった記憶。それがすべてです。
 チャラになんかできません」


 というわけで『機動戦艦ナデシコ』最終回のルリルリのよーに、つごうのいいIFの世界よりもこれまでの現実の一年間を西沢さんはえらびました。おかげでハヤテは目をさまします。なさけないったらありゃしません。女の子が助けてくれなかったら、自分が傷つかずにすむ偽りの世界にずっとひたりつづけていたって、それでも少年漫画の主人公かい。顔だけじゃなく根性まで女々しい。ハヤテもむかしはもうすこし男前だったんですがね。連載初期からいろんなものが劣化しました。




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